スターバックスがイタリア初出店 フラペチーノ抜きでエスプレッソの国に挑む

AP Photo / Luca Bruno

 エスプレッソの生まれた国は、グランデフラペチーノを作った会社を受け入れるだろうか。

 9月7日にイタリア1号店のオープンを迎え、スターバックス社はこの問いの答えを見つけ出そうとしている。数十年前、ミラノのエスプレッソバーはスターバックスのハワード・シュルツ氏のチェーン事業構想に大きな影響を与えた。そのエスプレッソバーを数多く抱えるミラノの市民の多くは今、このニュースを困惑しながらも概ね受け入れた。

 スターバックスの新店舗リザーブ・ロースタリーから遠くないところにあるコーヒーバーでミラノ在住のジュリア・ブリゲンティ氏は、エスプレッソの泡をこすって落としながらこう言った。「スターバックスのコーヒーを飲んだことがあるけど、私は断然イタリアのコーヒーが好きだわ」

 コーヒー店でエスプレッソを立ったまま楽しむのは、イタリア人の早朝や昼食後の習慣である。近所には、カフェが文字通りすべての街角にあり、イタリア人は信頼するバリスタとファーストネームで呼び合う仲だ。

 もっと高いドリンクを飲んで、長い時間店にとどまってほしいスターバックスにとっては難しい状況だ。

 スターバックス社は、全世界に28,000店舗以上を有するが、宮殿のように豪華なミラノのロースタリーは世界で3店舗目となる。他の2店舗は、本社のあるシアトルと上海にある。
 
 市内の大聖堂の近くにある、以前は郵便局だった建物の奥にあるのは、熱気ある大理石カウンターのあるコーヒーバーだ。中心にあるのは6.5mの高さの銅製の焙煎機で、来店客はローストの工程の一部を見ることができる。そしてメニューにはフラペチーノが存在しない。

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 スターバックス社はまた、この店舗のカクテルバーがより多くのお客を呼び込んでくれるよう願っている。イタリアのファッションと経済の首都であるミラノで働く人々の多くは、友達や同僚と「アペリティーヴォ(ディナー前のカクテル)」を楽しむ伝統を大切にしており、カフェがその場所に選ばれることもある。
 
 スターバックス社は、「イタリアの人々にコーヒーについて教育するために来るのではありません。イタリアはコーヒーが生まれた土地なのです。イタリアの人々が経験してきたのとは違う、プレミアムな経験をもたらしたいのです」とスターバックス社のチーフ・デザイン・オフィサーのリズ・ミュラー氏は話した。
 
 この言葉には、「さまざまな淹れ方のテクニックや、長時間滞在し、リラックスして楽しむことのできる空間」が含まれている。

 イタリアはスターバックス社の78番目の世界市場であり、ヨーロッパ1号店をロンドンにオープンしてからちょうど20年目にあたる。ミラノの店舗は同社によると「スターバックスのグローバルリテールの足跡における至宝」であり、今年以降ミラノでより多くのカフェをオープンすることを計画しているという。

 ブリゲンティのみならず、近所のコーヒー店でより伝統的なエスプレッソを飲んでいる他の地元住民も懐疑的であった。

「昔ながらのイタリアのコーヒーが最高だと思う」とジャンルイジ・マニュサルディ氏は言った。「僕は海外でもそれを飲むよ」 

By LUCA BRUNO and FRANCES D’EMILIO, Associated Press
Translated by Y.Ishida

Text by AP