「オーガニック」表記巡り揺れる米の酪農 小規模農家は「真のオーガニック」で対抗

AP Photo / Charlie Neibergall

 牛たちが青々とした草を気ままに食べているような、家族経営の小さな酪農家は破産の瀬戸際に立たされている。何千頭もの動物を狭い牛舎に閉じ込め、組立ラインのように一列に並ばせる大規模な酪農業者が、オーガニック牛乳の市場にも拡大してきているためである。

 オーガニック牛乳をつくる伝統的で小規模な農家の多くは、自分が購入する牛乳がパッケージに印刷されている理想通りの農場で本当に生産されているのか、消費者に確かめるよう促すことによって業界の変化に立ち向かおうとしている。大規模な業者は、米国農務省が決めたオーガニック牛乳の基準に合致していると主張する。しかし小規模農家によると、共和党や民主党の管轄下にいる連邦規制当局は、酪農業者に対して厳しいオーガニックの規制を緩めており、牛たちを狭い牛舎に閉じ込めて飼っている酪農業者が小規模な家族経営の農家に対して優位に立っているそうだ。

「私たちがこれらの問題を訴えた連邦裁判所よりも、米国農務省よりも強い権力が存在します。それは消費者です。彼らが支払うお金に力があるのです」と、ウィスコンシン州に拠点を持ち、農業政策に焦点を当てた非営利公益団体、コーヌコピア研究所のマーク・カステル氏は述べた。

                                                                                                                 

 酪農業界は、米国内の大部分の農業と同様に、1980年代以降は少数の大規模業者が増加する傾向になっていた。その当時は、オーガニック牛乳はファーマーズ・マーケットか専門食料品店でしか手に入らず、小規模な酪農家から地元の協同組合を通じて取引されていた。今やオーガニック乳製品は、コストコ、ターゲットやウォルマートといった主要な食料品店や多くの小売店でも広く売られている。しかしそのような企業のプライベートブランドの牛乳の大部分は、何千頭もの牛が巨大な牛舎に繋がれている酪農業者で生産されたものだ。

 カステル氏は、こうした酪農のあり方はかつてオーガニック提唱者たちが描いた姿や、消費者が自分が購入していると信じている牛乳とは正反対であると語る。9日に、彼の団体はオーガニック乳製品のスコアカードを発表した。そのスコアカードは、160種類のブランドを牧草地の品質や、放牧の時間、搾乳の頻度など、オーガニック製法をどれだけ実践しているかに基づいて評価している。

 コストコ、セーフウェイ、ウォルマートなどの食料品の小売業者へ、酪農業界の中で最もたくさん供給を行うオーロラ・オーガニック・デイリーの広報担当者は、オーガニック食品は小規模の生産者でのみ生産されていると信じている活動家が主に批判を行っているが、彼らはオーガニック食品の大規模な生産者を間違って認識していると述べた。

 ソニア・チュイテル氏によると、同社の農場は放牧のための4,046ヘクタール以上のオーガニックな牧草地を持ち、最低限の放牧日数の基準や、放牧による給餌の摂取割合の基準を守っている。

 同社はコロラド州とテキサス州に9つの牛舎を持ち、およそ26,000頭の牛がいるという。最大の牛舎には4,400頭の牛がおり、最小の牛舎では900頭の牛を飼っている。オーロラ・オーガニック・デイリーのCEOを務めるスコット・マクギンティ氏は、4月に発表した声明で、同社はすべての農場で米国農務省公認の認定を2つ得ていると述べた。

「2つ目のオーガニック認定は、私たちの農場がコンプライアンスに関する検査や測定をより頻繁に受けるようにするための、任意の品質保証の取り組みです」と彼は述べた。

 大規模農場との競争は、過去4年間の乳製品価格の急落と相まってオーガニック酪農業者の利益損失だけではなく、多くのケースで資金を失わせる結果となった。このことによって、小規模農場の閉鎖が加速した。

 米国農務省は2月に、オーガニックと従来型を合わせた米国内の酪農業者の農場数を報告したが、2017年は2016年に比べて4%減少し、40,219ヶ所であった。酪農業者の農場は、過去10年間で32%減少している。

 パティ・ウィルソン氏とブライアン・ウィルソン氏は、業界の変化によって収益が悪化したと語る。彼らは16年前にバーモント州オーウェルにある約242ヘクタールの夢のような牧場をオーガニック牧場に転換した。所有する50頭の牛から搾乳しても利益が出なくなった、とパティ氏は話す。彼女はフルタイムで酪農に従事する前は、米国農務省で働く農学者だった。

「私たちは牛たちをリストに記録し、売りに出すしかありませんでした」と彼女は言った。「それはゆっくりとした下落であり、ゆるやかな死のようなものでした」

 アイオワ州の南に位置する酪農家のフランシス・ティッケ氏の戦略は、他の農場主と協力して「真のオーガニック・プロジェクト」を始動し、パッケージにその製品が伝統的なオーガニック基準を満たしていることを消費者に伝える追加ラベルを作ることだ。今年実施されたパイロット・プロジェクトでは、「真のオーガニック」のラベルをつけた製品を生産する農場は50ヶ所ほどになる見込みだ。

 ラベルを付加される製品は、米国農務省の認定基準を満たすことに加えてプロジェクトの基準を満たさなくてはならない。製品が土壌で生産されており、水耕栽培でないこと、また家畜たちが外出することができるといった基準だ。

 ティッケ氏は1970年代からオーガニックの酪農を行っており、85頭のおとなしいジャージー種の牛を、フェアフィールドに近い295ヘクタールのラディアンス・デイリー農場で飼育している。牛たちは夏の暑い日には木々の下でくつろぎ、のんびりと歩いては青々と茂った牧草を口いっぱいに頬張る。彼は1週間におよそ7,570リットルの牛乳、チーズ、ヨーグルトなどのオーガニック乳製品を付近のレストラン、食料品店や私立大学へ売っている。

「基本的には、オーガニックの在り方を創始者たちが描いていた、元の形に戻すということだけです」とティッケ氏は「真のオーガニック」のラベルの活動について述べた。

By DAVID PITT, Associated Press
Translated by Y.Ishida

Text by AP

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