イヴァンカ氏、批判受け続けたアパレルブランドを廃止へ 大統領顧問職に専念

AP Photo / Andrew Harnik, File

 イヴァンカ・トランプ氏は、服や靴、バッグを展開する自身のファッションブランド「イヴァンカ・トランプ」の廃止を決めた。父親がアメリカ大統領に選出された後、同ブランドは政治的なボイコットの対象となり、利益相反の懸念に拍車をかけたためである。
 
 イヴァンカ氏は声明の中で、ホワイトハウスでの顧問の仕事にもっと集中できるようにこの決断を下したと語った。トランプ大統領の陣営に加入した時、同氏は自身の会社の日常的な管理業務からはすでに身を引いていた。

「ワシントンで1年5ヵ月を過ごし、このビジネスに復帰するのかどうか、復帰がいつになるのかもわからない。私は近い将来、ワシントンでの仕事にもっと注力することになるであろうと自覚している」とイヴァンカ氏は述べ、この決断を「私のチームとパートナーにとって唯一のフェアな結論」とした。

「イヴァンカ・トランプ」は、同氏が昨年初めにホワイトハウス入りして以来、政治的に様々な誹謗中傷にさらされてきた。アメリカ大統領の娘という知名度の高さによって、売上高は一時急騰した。しかしホワイトハウスの顧問であるケリーアン・コンウェイ氏がフォックスニュースに出演し、視聴者に「イヴァンカのブランドを購入しに行く」よう勧めたところ、トランプ大統領の政策を快く思わない人々が中心となって不買運動が急速に広まる現象も起きた。

 ノードストロームは昨年、売れ行きが低迷しているとして「イヴァンカ・トランプ」の取り扱いをやめた。そして最近、ハドソンズ・ベイも同様の措置に踏み切ったと報じられている。
 
 イヴァンカ氏の会社は、事業はいたって堅調であり、今回の件は業績とは何ら関係がないと語っている。「イヴァンカ・トランプ」の廃止によって18人の従業員が失業した。

 グローバルデータリテールの専務取締役を務めるアナリストのニール・サンダース氏は、「同社は依然として存続できるが、ビジネスを継続することは極めて困難になっており、こういった問題は増加の一途をたどることであろう」と語った。

 イヴァンカ氏は最近、アメリカの企業に対しアメリカ人労働者の雇用を確約するよう奨励している。同氏の会社は、中国工場での生産と労働条件、さらには大統領の機嫌を取りたいと考える中国をはじめとした外国政府が、同社の商標を承認していることについて、批判を受け続けている。

 イヴァンカ氏がブランドを廃止するという発表は、アメリカと中国の貿易摩擦が悪化しつつある最中に行われた。トランプ大統領は、中国を交渉のテーブルにつかせ、積年の不公平な貿易の慣行を是正しようとしている。

 ホワイトハウスは、中国からの輸入品に340億米ドルもの関税を課し、さらに9月までに新たに関税を課す可能性のある2,000億米ドルの品目を列挙している。これらの関税のいずれも、イヴァンカ氏が販売する衣類やハンドバッグを課税の対象としてはいない。しかし、もし大統領が中国からの輸入品に総額5,000億米ドルにも及ぶ税を課するという脅威を実行に移すのであれば、同氏の会社が中国から輸入しているすべての物品の価格が上昇することになる。

 同社は民間企業であることから、イヴァンカ氏の事業がどのくらい好調であるかを推し量ることは困難だ。5,000万米ドル以上の価値があるとされるイヴァンカ氏の資産の大部分は、事業や会社を保有する信託に含まれている。政府に提出された財務報告書によると、その信託は、昨年、500万米ドル以上の収益を上げている。

 昨年、イヴァンカ氏が父親の顧問としてホワイトハウス陣営に加入した時、自身の事業における金銭的な利害関係がホワイトハウス顧問としての公的な役割と矛盾しないよう、いくつかの制限に同意した。

 それでもなおイヴァンカ氏の会社は、同氏とホワイトハウスのつながりによって便宜を受けているとして非難を浴びている。

 昨年4月、中国政府は新しい3種の商標についてイヴァンカ氏の会社に対し暫定的な承認を与えた。そして同日、イヴァンカ氏と夫のジャレッド・クシュナー氏は、中国国家主席と夫人を交え、トランプ大統領の別荘であるマー・ア・ラゴで晩餐を共にした。これらの商標の承認は依然として有効である。今年5月までの3ヶ月月間に、中国はイヴァンカ氏の13種の商標に最終承認を下し、また別の8種の商標を暫定的に承認した。

 トランプ氏の会社は、同氏の名前を騙ってブランドを不法に占拠する者からブランドを保護するため、中国で2017種の商標を登録したと述べている。中国は、イヴァンカ氏の会社に関する商標登録のポリシーは、通常の法的な慣習に合致しているとしている。
 
「イヴァンカ・トランプ」は、製品を生産している工場の労働条件に関しても厳しい批判にさらされている。AP通信は昨年、中国の赣州にあるイヴァンカ・トランプ製靴工場の従業員たちと話を行い、長時間、低賃金の過酷な労働条件が明らかになった。

 同社は、サプライチェーンの「健全性」が最優先事項であり、低賃金や乏しい労働条件に関する申し立てを重く受け止めると語った。

By BERNARD CONDON, AP Business Writer
Translated by ka28310 via Conyac

Text by AP