スケジューリングが生産性を下げる理由
◆自由な時間は本当に短い?
しかし結局のところ、予定した出来事が始まるまでに残された時間というのは変わらない。
ということは、時間が短いように感じても、特に問題はないのではと思う人もいるだろう。しかし、それが問題なのである。時間が短く感じるという感覚そのものが、今後の行動に関する判断を左右する。
人は不足しているものの価値を高く捉え、それを手放したがらないものだ。
時間の場合も同様である。例え十分な時間を費やすことが最善の策となる状況でも、時間が限られていると思うと、消費したくなくなる。
もうひとつの調査では、私たちは被験者に、翌日の欄が空白になっているカレンダーを渡し、そこに自身の予定を(準備、移動時間も含めて)できるだけ正確に記入してもらった。こうすることで、予定と予定の間の自由時間を、正確に計算できる。
その上で、被験者には次の調査への参加をお願いした。被験者はいずれも、インターネットで30分間の調査に協力し、2.50米ドル(約276円)の報酬をもらうか、45分間の調査に参加して5.00米ドル(約552円)の報酬をもらうかのどちらかを選択できる。どちらの調査も、参加できる時間枠は1時間とした。
私たちの側では、この時間枠を戦略的に選んで被験者に提示した。半数の被験者には、予定が終わってから1時間以内に次の調査を開始すると伝えた。もう半数の被験者には、予定が始まる前に、30分の余裕を持って終わるような時間枠で調査を開始することにした。
その結果、最初のグループに割り振られた被験者は、時間はかかっても報酬の多い調査に参加できる余裕が十分すぎるほどあったにも関わらず、そちらには参加したがらない傾向があることが判明した。
しかし別の調査を実施したところ、次の予定が迫っているという意識だけがこのような結果に繋がったのかどうかという点に、私たちは疑問を覚えた。
また別の調査を開始する前に、被験者の半分には、約5分間は好きに過ごして構わないと伝えた。もう半分には、「開始する」までに約5分間の時間があると伝えた。
2番目のグループに割り振られた被験者の場合、「何かを開始する」というシンプルな言葉に、その言動に変化をもたらすだけの効果が見られた。こちらのグループは、5分間という短い時間を使ってメールを返信したり、ソーシャルメディアをチェックしたりしていたが、起こした行動の数が有意に少ないことが判明したのだ。