フェイスブック、端末メーカー60社と個人情報共有 中国への情報流出の懸念も

Ink Drop / Shutterstock.com

 一連のユーザデータの流出によって試練の時を過ごしているフェイスブックに、また新たな疑惑が浮上した。同社が個人情報を含むユーザデータを60社以上の端末メーカーと共有していたのだ。この疑惑は、さらに政治的問題に発展する気配を見せている。

◆アップル、マイクロソフトの名も
 ニューヨークタイムズは3日、SNS最大手のフェイスブックがスマホ用のフェイスブック・アプリが普及する以前の時期に少なくとも60社の端末メーカーと個人情報を含むユーザデータを共有するパートナーシップを結んでいた、と報じた。その60社にはアップル、アマゾン、ブラックベリー、マイクロソフト、そしてサムスンも含まれているこのパートナーシップを結んだメーカーの方はメッセージング、「いいね」ボタン、そしてアドレス帳のようなSNSで人気の機能をユーザに提供できたのだ。

 以上のパートナーシップは、同社が米連法取引委員会(FTC)と和解したプライバシー慣行に関する問題に関わっている。この和解が成立してからは、同社はユーザの明確な同意なしにはユーザデータを提供することができないのだが、件のパートナーシップにおいてはユーザの明確な同意なしにメーカーがユーザの友だちに関する情報にアクセスできていたことになるからだ。そして、ニューヨークタイムズの調べによると、実際にいくつかのメーカーはデータ共有を禁じているユーザの友だち情報を引き出すことができていたというのだ。

◆アプリストアの代替手段
 この報道をうけてフェイスブックは、直ちに反論する声明文を公表した。その声明によると、今日のようなアプリストアがなかった当時、フェイスブックやグーグル、ツイッター、ユーチューブといった企業はOSやデバイスを製造するメーカーと直接協力しなければサービスを提供することができなった、という。しかし、こうした開発体制では非常に時間がかかっていた。

 こうした状況を改善するために、それぞれのOSやデバイスのためにフェイスブックのサービスを再構築できる統合APIを作った。そして、アップルやアマゾンを含む60社近くの企業がこの統合APIを過去10年にわたって活用していたのだ。

 声明ではフェイスブックと統合APIを活用する企業のあいだには、ユーザ情報をフェイスブックのサービスを再構築する目的以外には使用しないという同意がなされていた、と述べられている。また、スマホが普及した現在では統合APIを活用する機会が少なくなったので、すでに22のパートナーシップが終了している。

◆中国への情報流出の懸念も
 以上の報道とその反論は、アメリカ政府をも動かした。ロイター通信によると、アメリカ上院の商業委員会はフェイスブックCEOのマーク・ザッカーバーグ氏に件のユーザデータ共有の件について、回答するよう求めた。また、アメリカ諜報特別委員会の副議長であるマーク・ワーナー上院議員は、データ共有していた企業のなかにファーウェイ、ZTE、シャオミといった中国系企業があったかどうか質問した。同氏の質問に、フェイスブックは即座には回答していない。

 中国系の電気通信会社は、現在アメリカの諜報関係者から注視されている。というのも、中国系の電気通信会社がスパイ活動を支援し、アメリカのインフラに深刻な脅威を与えている、とアメリカ諜報関係者が主張しているからだ。中国はこうした主張を一貫して否定している。

Text by 吉本 幸記