ミレニアル世代が「インパクト投資」を牽引するか 前世代と異なるビジネスへの考え方
◆ミレニアル世代にとってビジネスは社会に貢献する力
また、ミレニアル世代のビジネスに対する考え方が進化していることもインパクト投資促進の理由に挙げられる。
プロフェッショナルサービスファーム大手デロイトは2013年から毎年ミレニアル世代に関する調査を行っている。2017年の調査は先進国、発展途上国を含む30ヶ国に住む約8千人のミレニアル世代(1980年以降生まれ)を対象に行われた。
調査によると、ミレニアル世代はビジネスを肯定的に捉えていることが分かる。ビジネスが社会に貢献する力となり得ると答えた人はミレニアル世代の76%であった。また、一般的にビジネスは営業している地域の社会に貢献していると答えたミレニアル世代は88%とかなり高い比率である。
ミレニアル世代はビジネスに大きな期待を寄せていると同時に問題点も指摘している。調査によると、多国籍企業は社会が直面している問題(環境問題など)に関して十分な取り組みをしていないと考えるミレニアル世代が多いことも分かった。
ミレニアル世代は従来の消費者という立場だけではなく、企業の営業方針や社会的貢献度に関心を持っている。こういった考えは投資決定に大きな影響を与えると思われる。
◆「大いなる資産移転」
さらに重要なのが、ミレニアル世代が今後所有する資産額が挙げられる。米国のベビーブーマー世代(団塊の世代)の高齢化が進んでおり、資産運用業界では今後資産の動きが注目されている。
北米では約30兆ドル(約3200兆円)の資産が今後30年の間にベビーブーマーからミレニアル世代に引き継がれると予測されている。この「大いなる資産移転」ピーク時の2031年から2045年の間には米国における資産の10%が毎5年ごとに保有者が変わることになる(アクセンチュア)。
社会問題に関心があるミレニアル世代の遺産相続が進む中、その資産の一部がインパクト投資に使われる可能性は高い。この資産移転の影響によってインパクト投資普及がより促進すると思われる。
他の先進国と比較すると日本国内のインパクト投資市場は2017年時点で約718億円といまだ小規模だ。しかし過去3年間で4倍以上に拡大しており、急成長を遂げている(GSG国内諮問委員会)。
国内大手金融機関によるソーシャルインパクトボンド(SIB)の組成普及なども進んできた。今後の成長を ミレニアル世代に期待したい。
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