フェイスブック、人種・性別に基づいた広告表示で提訴される 個人情報の濫用明るみに

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 大量のユーザデータの流出、さらには通話履歴の無断収集とユーザ情報の保護に関して相次ぐ疑惑にさらされているフェイスブックが、住宅広告の対象の選別に加担しているとして提訴された。同社は、性別や人種に基づいて住宅広告を選択的に表示できるサービスを運用していた。このサービスが公民権運動によってできたある法律に反しているとされている。

◆「民族的関連性」に基づいた広告
 企業または政府が違法行為をしていないかどうかの検証を掲載するニュースサイト『プロパブリカ』の記事によると、フェイスブックは特定の性別や人種、その他の人権に配慮すべき事項に該当したユーザに対して住宅広告を非表示にできるサービスを広告主に提供している。同社は広告表示を排除できるユーザ属性を「民族的関連性」と総称していたのだが、こうした性別や人種に基づいて住宅取引を制限することは、アメリカの住宅と雇用に関する法律が禁止している。同記事は、実際に同社に住宅広告を出稿したところ、「民族的関連性」の項目にはアフリカ系アメリカ人、アジア系アメリカ人、そしてヒスパニックといった選択肢が確かめられた、とも報告している。

 以上の事実を公民権に詳しい弁護士のジョン・リーマン氏にコメントを求めたところ、同氏は「この件は恐るべきものです。これは大規模な違法行為です。アメリカが定める公正住宅取引法に対する違反行為として、これほど悪辣なものは初めて見ました」と述べた(同上)。

◆ユーザデータこそがちからの源
 ニューヨーク・タイムズ紙は、プロパブリカの記事が掲載された日と同じ3月28日、アメリカにおける住宅の公正な取引を推進するNPO団体であるアメリカ公正住宅取引連合とその関連団体がフェイスブックを提訴したことを報じた。その提訴内容は、フェイスブックの広告プラットフォームが「子供、女性、その他の属性に該当する人が住宅の賃貸と販売に関する広告を受け取れないように、家主または住宅販売業者が設定できることを続けている」というものだ。

 以上の訴訟を担当する弁護士のダイアン・L・ホーク氏は「わたしたちは、広告主がフェイスブックが定めたチェックリスト(「民族的関連性」の項目のこと)を使って、特定のグループに属している人々を住宅に関する広告から締め出す機能をフェイスブックが削除するように法廷が命じることを求めています」と述べている。同氏はさらに「ユーザーデータという巨大な宝物に基づいてインターネット・ユーザに対して広告をカスタマイズする能力は、フェイスブックを世界でもっとも大きな広告代理業者としました。そして、フェイスブックの広告プラットフォームは何百万という企業に選ばれるようになりました。しかし、いまやフェイスブックはその巨大な力を濫用しているのです」と発言している。

◆公民権運動最後の遺産
 アメリカ公正住宅連合は、訴訟に関する事実関係を説明したうえで、公正な住宅取引を推進する各団体の代表者のコメントを掲載している。提訴した諸団体の筆頭となっているアメリカ公正住宅連合のプレジデント兼CEOのリサ・ライス氏は「フェイスブックが差別を目的としてユーザデータを活用することは濫用行為であり、こうしたデータの使用は停止すべきです。こうしたユーザデータの濫用は、女性、子供のいる家族、何らかのハンディキャップを抱えた人、そのほかの住宅を探すのに苦労している人に対する問題行為です」と述べている。

 また、サン・アントニオ公正住宅評議会のエグゼクティブ・ディレクターを務めるサンドラ・タメズ氏は「公正住宅取引法は今年で50周年を迎えます。この法律は公民権運動の時代に勝ち取られた最後の偉大な法制度なのです」「わたしたちは子連れの女性や有色の肌の人のような歴史的に締め出されてきたグループが住宅を得る機会が増えるように、また現在も続いている差別的な住宅広告に終止符を打つためにずっと戦っています。そうした戦いは、たとえ広告の形式がフェイスブックやそのほかのオンライン・プラットフォームになっても続くのです」と語った。

Text by 吉本 幸記