シリコンバレー去る中国人エリート 母国の「ブラック」環境に身を投じる理由
◆就職は好条件。アメリカより魅力的
中国企業は海外に住む学生のリクルートから技術者のヘッドハンティングまで盛んに行っており、大手IT企業は複数の好条件を提示しているという。
中国は今ITバブルを享受していることから、ときにはアメリカを上回る給与が期待できる。またアメリカではガラスならぬ「竹の天井」があり中国人エンジニアは出世しにくいといわれているが、成長著しい母国の企業ではキャリア構築のチャンスも増大する。さらに、政府が最先端の研究に金銭的インセンティブを用意する上に、7.5億人のインターネット利用者がいる中国は技術者にとって壮大な実験場だ。潤沢な資金とビッグデータは、理論を現実に変えたくてうずうずする者たちにとって魅力的だとブルームバーグは指摘している。
◆IT支える猛烈社員。アメリカもうかうかできない
このほかに、中国企業は採用の売り文句として、母国で働ける安心感を上げるとブルームバーグは述べる。しかし、フィナンシャル・タイムズ紙(FT)に寄稿したセコイア・キャピタルのパートナー、マイケル・モリッツ氏によれば、中国のテック企業の社員の働きぶりは、西洋とは全く違ったものだという。
仕事のペースは猛烈で、管理職なら朝の8時に出社し、夜10時まで家に帰らない。技術者の場合は朝10時出勤で帰りは夜中の12時だ。旧正月などの大型連休以外はほとんど休まないし、終末に仕事が入ればだれも文句をいわず出勤してくるらしい。アメリカのスタートアップも最初の数年は同様だが、その後スローダウンするとのことで、創業10年以上でもこれが普通だという中国企業では、日本でならばブラック企業とも呼ばれかねない状況のようだ。
オフィスも質素倹約で、高級イスやフラットパネルのモニターはほとんど使われず、皆がラップトップで仕事をする。出張のフライトはエコノミーで、ホテルは相部屋、ティーバッグは何度も使い、冬場は寒さをしのぐため、社員がコートやマフラー姿で働く企業もあるらしい。
アメリカからの帰国者がこのような労働環境をどのように受け止めるのかは謎だが、モリッツ氏は、労働倫理こそが中国IT企業発展の理由だと見る。個人の権利やワークライフバランスを叫ぶシリコンバレーのアメリカ人とは違い、中国の猛烈社員は窮乏の記憶と個人の生活を良くしたい気持ちを労働倫理の源にしていると同氏は述べ、シリコンバレーも中国を見習うべきだと主張している。
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