報酬1.5倍も 製薬会社が医者を積極ハンティング その背景とは?

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 ここ数年、多国籍製薬会社の相次ぐ不祥事が国際メディアで大きく取り上げられ、大手製薬会社はその信頼回復に向けた取り組みを余儀なくされている。この点について、外資系人材紹介会社ヘイズ・ジャパンのマネージング・ディレクター、マーク・ブラジ氏は、「製薬会社は医療プロフェッショナルを採用することによって評判を取り戻そうとしている」と指摘している。

 ブラジ氏は、「今年は商業セクターにおける医師の採用ニーズが急速に拡大しています。彼らは、従来のような飛び込み営業とは異なり、同業者の目線で相手方の医師の気持ちを動かすことができます。こうしたプロフェッショナルは患者を守ることを誓っているため、信頼性も高いといえます」と分析している。

 特に将来リーダーとしての役割が期待される45歳以下の医療プロフェッショナルに対する需要が高く、転職の意思があるプロフェッショナルに対しては高額な報酬が準備されている。「昨年は35、40、50%といった報酬アップも見られ、しかもコンサルタントの側からの交渉がほとんど必要なかった状況です。求職者が希望する額を出すと、すぐにオファーを出す会社も増えており、相場は高騰しています。長い間空いていたポストの場合、求職者がとても断れないようなオファーを出すケースも見られます」とブラジ氏が説明するように、相場は相当に高騰しているのが現状のようだ。

                                                                                                                 

◆ジェネリック医薬品市場拡大による競争激化-求められる医療プロフェッショナル
 製薬会社における人材獲得競争の激化には、急速な高齢化に伴う医療費負担の抑制に向けて日本政府がジェネリック医薬品の利用を促進していることが背景にある。「日本の医師は、ジェネリック医薬品や伝統的な薬草療法である『漢方』に頼ることが多いのですが、この考え方を変えることが製薬会社にとって重要です」とブラジ氏は分析している。

「腫瘍、中枢神経系、心血管は、高齢化が深刻な日本における3大疾患領域となっています。これらの疾患に対しては革新的な新療法がありますが、それらは費用が高く、製薬会社はたったの15年で薬品と装置にかかる支出を回収しなければなりません。自分たちの薬を使うよう、キーオピニオンリーダーを動かすことのできる人材を製薬会社が求めているのはこのためです」

 また、保守的な医療プロフェッショナルは製薬会社で働くことに対し慎重な傾向があるだろうが、医療プロフェショナルが製薬会社で働くことで広範囲に患者に影響を与える機会が得られるとともに、ワークライフバランスの向上や報酬アップも期待できるだろう。

 こうした医療プロフェッショナルのキャリアについてブラジ氏は、「日本の医療制度や病院が直面する課題をよく理解し、日本やほかの地域の規制を熟知している人材であれば、需要は大きいはずです。さらに、医療機器、医薬品、バイオテクノロジー、CRO(医薬品開発受託機関)などでライン管理の経験があり、PMDA(独立行政法人医薬品医療機器総合機構)とのパイプがあれば、自分のキャリアだけでなく日本中の患者に大きな違いをもたらすことができます」と述べている。

Text by 酒田宗一

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