アジア太平洋のビジネスリーダー「成長に自信」、過去3年で最高水準に PwC調査

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 PwCが実施した「第7回APEC CEO年次調査」によると、APEC参加21カ国・地域のビジネスリーダーで収益成長に自信があると答えた人の割合は、過去3年間で最高水準に達したという。APECを構成する多くの国・地域で、貿易政策の不確実性とそれに関連する政治的緊張の高まりにもかかわらず、向こう12カ月の収益成長に大いに自信があると答えたAPECのCEOは37%であり、2016年の28%から増加している。

◆APEC企業CEOの高い成長への自信
 今回の調査対象となった企業のうち、世界における投資(APEC以外の地域への投資を含む)を来年増額するとした企業は実質50%となり、昨年の43%から増加した。背景には、APECの企業が地盤を固め、世界経済への影響力を増していることがあると指摘されている。

 また、投資を増額すると回答したCEOの71%が投資増額分を2018年にAPECに振り向けるとしており、APECのCEOの63%は世界における事業範囲が今後3年間で拡大すると予想している。地域別に見ると、最も多くの投資を獲得するのは、ベトナム、ロシア、フィリピン、インドネシア、マレーシアとなる見込みだという。

 PwCグローバル会長のボブ・モリッツ氏は、「収益成長に対するビジネスリーダーの自信は、投資計画を推し進めるにあたり、不透明感が払拭(ふっしょく)されるのを待つ必要はないことを示しています。このことは、短期的にAPECの勢いに弾みをつけ、APECの世界への影響力を強め、企業買収を巡る活動を下支えするでしょう。CEOの71%が将来はビジネス・パートナーシップと合弁事業への依存が高まると予想しています」と述べている。

◆貿易政策の不確実性
 本調査では、APECのCEOのほぼ4分の1が貿易環境の制約が強まったことを経験したと認めており、特に外国人労働者の雇用(23%)や国境を越えた財の移動(19%)への関心が高くなっている。近い将来、CEOの30%が労働力に対する規制が強化されると予想し、4分の1が財の移動への障壁が向こう12カ月以内に引き上げられると予想している。世界有数の金融センターであるシンガポールのCEOの半数は、労働移動への障壁が向こう12カ月以内に引き上げられるだろうと述べている。結果として、CEOの過半数(71%)が貿易環境の変化への対応策として、ビジネス・パートナーシップと合弁事業への依存が強まると予想しており、68%が国内または二国間協定締結国での事業拡大を計画している。

◆競争相手は新興国の多国籍企業に
 CEOは、APEC諸国における大手地域企業との競争激化を認識しており、新興国での競争激化についても3年連続で指摘している。これらの競争が今や、先進国の既存の多国籍企業との競争にとって代わろうとしている。CEOの19%は、今後3年から5年における最大の競争相手が新興国の多国籍企業だと考えている。あるいは、最大の競争相手としてAPEC諸国の地域の有力企業を挙げるCEOも22%いる。ほぼ3分の1(32%)は先進国の多国籍企業が最大のライバルだと考えているが、その割合は2014年の41%から低下している。

◆デジタル労働力というイノベーション
 CEOの自信が高まる中で、イノベーション主導の成長機会への認識が高まっていることも指摘されている。自動化は、将来の労働力の増強に向けた戦略の一環として繰り返し唱えられている重要テーマであり、58%が特定の機能を自動化し、40%が機械学習などの新しいテクノロジーに投資している。ASEANの企業にとって自動化は優先課題であり、「デジタル労働力」の開発は戦略における重要な要素となっているということだ。

 ボブ・モリッツ氏は、「APEC諸国は、自動化と未来の労働力の統合に向けた試験台となる可能性があります。企業はどのようなスキルを必要としているかを熟知しており、今や、そうしたスキルを訓練、開発、評価する実践的な方法の構築に向けて、民間部門と公共部門が協力して取り組む必要があります」と述べている。

◆日本のビジネスリーダーへ
 本調査結果を受け、PwC Japanグループ代表の木村 浩一郎氏は、日本国内のビジネスリーダーに向け、以下のようにコメントしている。

 「他のAPEC諸国と同様に、日本のビジネスリーダーの投資意欲は旺盛です。半数以上の日本のCEOが向こう12カ月における投資の増額を予定していますが、このうちの約7割がAPEC域内を対象としています。このことからも、日本企業とAPECとのつながりは、今後ますます強まっていくことが予想されます。一方、新しいテクノロジーを採用した事業変革や人材開発の面で、日本企業はAPECの企業に遅れを取っているようです。業務の自動化や機械学習など先端テクノロジーの導入実績において、日本のCEOの回答は相対的に低い水準にとどまっています。

 グローバル化とテクノロジーの進歩により加速度的に事業環境が変化していく中、より重要性が増しているのは、これらを踏まえた人材への投資です。社会に対して価値を生み出す人材の開発は、今後も変わることのないビジネスリーダーとしての責務と言えます。日本企業も、人材への継続的かつ環境変化を踏まえた適切な投資によってグローバル市場での競争力を高め、APEC地域のより豊かで持続可能な経済圏の実現に貢献できると考えます」

Text by 酒田宗一

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