フィンテックは金融業界をどのように変えるのか 注目の8つの動き

SunnyToys/shutterstock.com

 世界経済フォーラムとデロイトの最新レポート「フィンテックのその先に:金融業界における潜在的なディスラプションの実証的評価」によると、フィンテックは金融サービスにおける競争の基盤を大きく変貌させたが、競争の勢力図の大きな変化はまだ起きていないという。本レポートでは、将来の変化をもたらす主要因を分析し、業界の未来を形作っていく可能性の高い一連のディスラプティブな要因の始まりとフィンテックを位置付けている。

 本レポートでは、金融サービスの勢力図を変容させる可能性のある8つの要因を指摘している。これらの要因には以下の3つの大きな調査結果が含まれる。

◆Platforms rising
 顧客の選択肢が増えたことに金融サービスの開発や販売は大きく影響され、また、企業は自らの役割のシフトを迫られると予想される。単一のチャネルから多数の金融機関につなぐ能力をもたらすプラットフォームは、金融サービス提供のための支配的モデルとなる可能性を秘めている。オープンバンキングなどを含むこれらプラットフォームは、金融サービスが特定の企業から提供されていた状況から提供企業をいつでも選択できるものに変容させていくと考えられる。その結果、プラットフォームの所有者はエコシステムの有能な管理者となり、金融サービス提供企業のニーズと顧客需要とのバランスを取っていくことを求められる。

◆Financial regionalization
 規制における優先事項、技術力、顧客ニーズの差異は、金融のグローバル化の流れの妨げとなっており、地域それぞれの状況に見合う金融サービスに基づいた地域的なモデルに取って代わられつつある。たとえグローバル企業であっても地域における競争面の優位性を磨き、地域のエコシステムへと同化していく明確な戦略が必要となるかもしれない。一方、テクノロジーによって参入障壁が下げられるとしても、フィンテックが複数の国々に定着していくには大きな障壁が立ちはだかる可能性が高いと考えられる。迅速に規模を拡大させようとするフィンテック企業が新規市場への参入を狙う上で、既存の金融機関はその魅力的なパートナーとなる可能性がある。 

◆Systemically important techs
 既存の金融機関が大手テクノロジー企業の中核能力に追随しようとすれば、それらの企業への依存度が高まっていく可能性が高いと考えられる。例えば、金融機関が顧客のデジタルエクスペリエンスを強化し、顧客プラットフォームからのデータや売上の獲得を求めれば、関連プロセスの拡張・展開、また人工知能(AI)をサービスに利用することによって、結果的にますます大手テクノロジー企業の持つクラウドベースインフラへの依存度を高めていくことになるだろう。金融機関が勢力の拡大を求め新たな強みを獲得していこうとすると、難しい選択をせまられることになると考えられる。つまり、大手テクノロジー企業に依存するか、あるいは独立性を守るためにそうした企業とのかかわりを縮小させる結果、テクノロジーを利用したサービスで後れを取るリスクを受け入れるかの選択ということだ。

 また、本レポートでは、以下のような要因も新たに指摘している。

Cost commoditization:金融機関は積極的にコスト基盤をコモディティ-化し、この点における競争優位性がなくなり、差別化を図る新しい基盤を創出させていく可能性がある。

Profit redistribution:テクノロジーを利用することで組織は既存のバリューチェーンを通さず、利益の再分配ができるようになる可能性が高い。

Experience ownership:顧客接点を持つ販売業者はカスタマーエクスペリエンスのオーナーとしての戦略的な強みを持ち、商品開発企業はより大規模化、もしくは集中化することが求められる。

Data monetization:差別化のためのデータの重要性はますます高まる可能性があるが、取引情報などの静的なデータは、複数のソースから集約されるリアルタイムに活用できる動的データに置き換えられていくと考えられる。

Bionic workforce:機械が人間行動を再現する能力が進化していくに従い、金融機関は労働力と資本をひとまとまりの能力として扱う必要に迫られるようになると考えられる。

Text by 酒田宗一