なぜ米国のMBAへの出願者は減っているのか? 中国では新しいトレンド

Dariusz Jemielniak ("Pundit") / WikipediaCommons

 ビジネススクールの入学適正テストを運営するGraduate Management Admission Council(GMAC)によれば、昨年に比べ、アメリカのビジネススクールへの出願数が減少しているという。その一方で、カナダ、欧州への出願は増加している。これまでアメリカのMBAコースに最も多くの留学生を送り出してきた中国の志願者の動向にも変化がみられる。

◆米MBA信仰薄れる。生き残れるのは名門のみか?
 GMACによれば、全米の407のビジネスプログラムを対象にした調査で、2017年度のMBAコースへの出願者数は、2016年度に比べ3.2%減で、3年連続の減少となった。すでに大学時代に借りた多額のローンを背負っているアメリカ人にすれば、高額なMBAの学位のため、仕事をやめて2年間を費やすことは厳しいと、大学関係者らは述べている(ウォール・ストリート・ジャーナル紙、以下WSJ)。

 アメリカの大学は多くの留学生を受け入れているが、WSJによれば、海外からのMBA志願者も昨年と比べ5.8%も減っている。今年度、留学生の志願者数が増加した全米のビジネススクールは、全体のわずか32%しかなかったとGMACは報告している(フィナンシャル・タイムズ紙、以下FT)。ペンシルバニア大学ウォートン・スクールやハーバード・ビジネススクールなどの名門校の人気は依然として高いが、学生数50人以下の小規模プログラムは苦戦しているとWSJは伝えている。

◆カナダ、欧州は好調。留学生取り込みに成功
 GMACが世界40ヶ国351のビジネススクールを対象に行った調査によれば、海外からの出願者数は、カナダのビジネスプログラムで77%、欧州で67%増加し、アメリカとは対照的な結果となった(インド、エコノミック・タイムズ紙)。WSJによれば、カナダのトロント大学ロットマン・スクール・オブ・マネージメント、フランスのINSEADなどの人気が高い。FTによれば、ブレグジットで揺れるイギリスのMBAコースでも、3分の2のプログラムで海外からの出願が増加している。

 留学生がアメリカを選ばなくなっている理由の一つとして、WSJは、アメリカでの就労に必要なプロフェッショナルビザ(H1B)への方針をトランプ政権が変更しようとしていることを上げる。一方、FTは、アメリカではほとんどのMBAが2年間のコースであるのに対し、欧州では1年間のプログラムがメインであることを上げている。学生側には、コストと離職期間を最小化するため、できるだけ早く終了させなければというプレッシャーがあり、MBAのブランド力の強さに加え、期間の短さも重視するのだとしている。

◆国内のMBAに回帰する中国人
 さて、中国は長年に渡りアメリカのMBAに多くの学生を送っているが、中国人学生の間では国内回帰が増えつつあるとFTが報じている。中国では、歴史的に欧米のMBAは中国のそれに比べ格上とされてきたが、近年中国と海外の質の差が縮小してきたことから、国内のMBAを選ぶ学生が増えてきているという。例えば、上海にある中欧国際工商学院(Ceibs)のMBAコースは、FTの今年のランキングでは世界11位となっており、同校を含む5つのスクールがすでに世界のトップ100にランクインしている。また国内の20以上の学校が、欧州のビジネススクール認証団体から認定を受けた質の高いプログラムを提供している。

 さらに、近年MBAを目指す中国人の関心は「ネットワーク作り」にあり、海外に出るより、終了後の就職へのコネ作りができる国内のコースのほうが有益だと考える学生も増えているという。1万人の同窓生を持ち、その半数以上が企業の会長、CEOである北京の長江商学院のMBAコースの40%は海外の大学で学んだ学生で、みなキャリア構築には海外より都合がよいと言う理由で、帰国しているという(FT)。

 このような中国の事情も踏まえ、ロンドン・ビジネススクールと共同で欧州のいくつかのビジネススクールが、中国人学生に中国企業との接触の機会を提供するキャリアフェアなどを過去3年に渡り開いている。また、INSEADには、2ヶ月のCeibsキャンパスでの交換プログラムも用意されており、中国国内のビジネスコンタクトを作る機会として期待する学生もいるとのことだ(FT)。

 ボストン大学クエストロム・スクール・オブ・ビジネスの副学部長、J.P.マティチャク氏は、「マーケットが変われば顧客のニーズに合うようビジネススクールも変わらねば」とWSJに述べているが、欧州だけでなく、著しく進歩する中国のMBAも、今後の米MBAのライバルとなりそうだ。

Text by 山川真智子