優秀なリーダーになるには 科学で解明

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著:Katie Baileyサセックス大学 Professor Of Management)、Amanda Shantz(ダブリン大学トリニティカレッジ Associate Professor in Human Resources and Organisational Behaviour)

 社会、政治、組織生活のあらゆる領域でリーダーに対する世界中の人々の注目が集まる中、リーダーシップにかつてないほどスポットライトが当てられている。ただしリーダーは頼みの綱というよりどちらかというと問題のひとつとみなされることが多い。これが政治家になると、政党の党首らは明確なビジョンを提供できない、個人的倫理観の欠如、公約の実行力のなさなどを指摘されることが往々にしてある。

 英国のメイ首相は2017年の総選挙において保守党の大敗を広く批判された。メイ首相の「強力で安定した」指導力というロボットのように主張する自説は大きな非難の的となった。

 一方、ニュース報道は米国のトランプ大統領が主張するをとめどもなく列挙し、大統領職への適格性を疑問視している。また、世界の政治家は、経済的理由とは対照的に、倫理的理由で政策を支持したり阻んだりする傾向が強まっている。

 組織環境では、金融危機、一連の企業の不祥事、従業員がよい仕事を確保する際に直面する目の前で起きている問題の結果、指導者への信頼のレベルは史上最低という話を聞く。我々が最もよく耳にするのが要人の失敗のケースであるのはやむを得ないが、リーダーシップとは階層のトップだけに起こるプロセスではない。リーダーシップと組織環境におけるリーダーシップの機能について知りたければ、リーダーシップの行動や態度が組織全体にいかに拡散していくかを検討することも必要だ。

◆研究からわかること
 我々は研究の中で、何が効果的な指導者を創り出すのかを発見することを目標とした。短期の財政的課題に不断の焦点を置くことで生ずる失敗に対する対抗手段として思慮深く目標を持ったアプローチがもてはやされることが多いため、我々は「目標のあるリーダーシップ」に特に関心を抱いた。

 目標をもったリーダーとは独自の確固たる倫理基準をもつ人物で、説得力のあるビジョンを持ち、意思決定に際しては幅広い利害関係者のニーズを考慮する。他にも多くのタイプのリーダーがおり、例えばカリスマ的なリーダーは、個性とビジョンの力に依存して部下の業績を上げる。ただし、他のタイプのリーダーシップと同様、カリスマ的なリーダーシップは、逸脱した行動に向かう危険な展開に部下を陥れる暗い一面をもつことがある。

 ただし目標をもったリーダーというのは比較的稀だ。我々が英国の管理職の統計標本に質問をしたところ、21%だけが、高い目的意識をもっていると自己評価した。これをさらに分析すると、リーダー全体の35%がチームに対するしっかりしたビジョンをもち幅広い利害関係者に力を注いでいることがわかった。8%だけが、個人的な強い倫理基準を持っていると述べた。従業員に質問したところ40%だけが、上司が倫理的に行動していると答えた。

 この研究では目標をもったリーダーたちは部下から倫理的だとみられ、その結果従業員の満足度は高まり、業績は上がり、離職率は下がり、進んでさらなる努力をするようになることが明らかになっているため、これは重要だ。

 けれども目標を持ったリーダーは他とのかかわりを持たずに出現するわけではない。他の組織に比べてリーダーが一層目標をもって行動することが出来る環境づくりがうまい組織がある。公共部門、民間部門、非営利部門のケーススタディーをさらに詳細に掘り下げてゆくと、ある興味深い違いが判明した。

 上級幹部が積極的な役割モデルを提供している組織では、組織全体に目標をもったリーダーシップが広く普及する可能性が高くなる。

 我々が話をしたある小売業の人物はこう述べている。

 私たちのCEOは非常に明確なビジョンを持っており、皆、このCEOのビジネスを変革するビジョンに完全に従っています。そして同僚レベルにまで高い水準の意識が浸透していると思います。

 同様に重要であったのは、純粋な組織的価値だ。ある慈善事業で、人々は、あらゆる逸脱の実例に抗議する力となった同じ価値と倫理観を知り共有した。また、我々は、内部告発に関して明確で広く理解された方針とプロセスをもつことにより、組織が倫理を真摯にとらえていると従業員が安心したことを突き止めた。すべての人がその慈善事業の特定の宗教的遺産に親近感をもたなかったにしても、従業員らはリーダーによって示された倫理規定によってさらに元気づけられた。

◆従業員の解放
 また本研究では、制約された環境において経営が与える悪影響も浮かび上がった。従業員に時間またはリソースが欠けている場合、一般的にまず犠牲にすることは、目標と倫理を重視することだった。

 中央政府機関のあるリーダーは「懸命に働いていてストレスを感じる時、人は個人よりも作業に重点を置いている」と述べている。

 組織が直面する別の制約は、特に多くの再編、合併、買収を通ってきた様々な大規模組織が、単一の明快で一貫性のあるビジョンを創造し、組み込むことの難しさだ。これは、自分の組織が「気づくことができる以上の多くのビジョン」を持つことにより、従業員は何を優先すべきなのか混乱し、確信をもつことができないというある参加者のコメントに尽きる。この言葉はあらゆるレベルのリーダーが果たすことのできる重要な役割をはっきりと示していた。

 リーダーが「目標をもって」確実に人々を統率するためにできることはたくさんある。その第一は、組織全体のビジョンが何かを知ること、あるいは自分が上級職にあるのなら、重要なビジョンを開発し、確実に広めていくことだ。自分の仕事がいかに自分に適しており、自分がいかに貢献しているかを知るための従業員のビジョンと価値観に関する定期的な討論は重要だ。

 第二に、リーダーは自己の独自の個人的倫理規範について、考える必要がある。自分にとって個人として最も重要な基本的価値観は何なのか。人は仕事に就く時、最初から自分の価値観を捨てない。そこで、これらの価値をどうすればチームの作業に統合することができるかどうか検討してほしい。最後に、意思決定をする時には、短期的な業績の結果だけを重点に置くのではなく、時間をかけて影響を受ける様々な利害関係者のことを考えてほしい。

 現在広まっているビジネス環境、英国のEU脱退に伴い直面している国内の不安定と変革の長い時期を考慮すると、プレッシャーはこれからますます増しそうだ。目標をもって行動するための要件が現在ほど急を要するものであったことはかつてない。だが、これはあらゆる分野のリーダーの「目標をもって」行動する能力にさらなる難題をもたらすことになるだろう。

This article was originally published on The Conversation. Read the original article.
Translated by サンチェスユミエ

The Conversation

Text by THE CONVERSATION