成熟したダイバーシティ&インクルージョンな会社はたったの12%

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 企業の成長戦略としてダイバーシティとインクルージョンが注目されている。企業は社員の多様性を認めるだけでは十分ではない。社員が帰属意識を持てなければチームは機能しないからだ。そこで企業は社員をプロジェクトに巻き込むこと、つまりインクルージョンも同時に求められている。

 しかし調査によるとダイバーシティとインクルージョンを完璧に実施している企業は世界を見ても非常に少ないことが判明した。この実現に向けて企業にはどのような解決策があるのだろうか。

◆D&Iを実現している企業は稀
 アメリカの会計事務所デロイトが245のグローバル企業の調査と70以上のクライアントのインタビューを実施した。調査にてダイバーシティとインクルージョンの進度を測定し、多様な価値観に寛容な企業文化を作るために企業はなにをするべきかが検証された。

 調査で明らかとなったのは、多様な人材を巻き込む企業は6倍もよりイノベーションを起こしやすく、6倍もより変化を予想して効果的に対応しやすく、2倍もより財務目標を達成、超過しやすいということだ。

 しかしこれら明らかとなった利点にも関わらず、世界のたった12%の企業だけがダイバーシティとインクルージョンにおいて完全に成熟しているのだという。調査でさらに明らかとなったのは、多様な人材を巻き込む企業文化においては、従業員は自分自身になれるよう感じ、問題も社内で共有しやすいという。

◆なぜD&Iを実施する企業は少ないのか
 アメリカの経済誌「フォーブス」の取材に応えたBersin by Deloitteのシャーマン・ガー氏によると、多様な人材を巻き込む文化を持つ企業が少ないのは、D&Iは歴史的にコンプライアンスや法的機能により制約されてきたからだと指摘している。彼女は多様な人材を巻き込むために企業は、人々がD&Iについて考えていることを根本的に変えなければならないと述べている。

◆どのような方法があるのか
 デロイトは多様な価値観に寛容な企業になるための六つの原則を挙げている。以下にて、その概要を紹介する。

1, ダイバーシティとインクルージョンの進度をビジネス上重大なことだと捉えること。

2, ダイバーシティの重視から、ダイバーシティとインクルージョンの重視に移行すること。

3, インクルージョンの推進をリーターシップの優先事項とすること。

4, 階層的な多様性と思想的な多様性の両方を統合させた人材経営を行なうことにより、多様な人材を巻き込む企業文化を強化させること。

5, 個人を行動に移らせるようなダイバーシティとインクルージョンの資源を与えること。

6, 説明責任を向上させること。

 ダイバーシティとインクルージョンによってもたらされる利益は企業にとっても見過ごせないものだ。上に挙げられたような取り組みを通じて多様な人材を巻き込む企業文化が広がることが望まれているだろう。

Text by Yota Ozawa