認識の危険性調査 私たちは「現実」を認識できているのか

 私たちの認識の多くは、日々の断片的な体験や情報の積み重ねによって作り上げられている。場合によっては、確たる理由もなく自分は世の中を正しく認識できていると考えがちだ。そんな認識の危険性について、グローバル市場調査会社のIpsosが世界40カ国を対象に調査を行い、「Perils of Perception」としてレポートを発表している。

 認識ギャップはどのようにして測られているかというと、例えば「あなたの国にどれだけのイスラム教徒が居住していると思うか」という質問の結果を、現実のイスラム教徒の数と比較し、認識と現実とのギャップを計測している。調査の結果、多くの国で自国のイスラム教徒の数を現実よりも多く認識しており、また驚くべきスピードで増加していると誤解していることがわかったという。そのほか、世界での認識ギャップの傾向には以下のような特徴が認められた。

・同性愛、妊娠中絶、婚前の性交渉について、認識よりも現実は寛容
・自国の幸福感に関する認識よりも、現実に「幸福だ」と回答した割合のほうが高い
・富の分配については、殆どの国で認識よりも現実のほうがより偏っている

 また、日本人に限ってデータを見てみると、現在の人口については正確に認識できている一方で、将来の人口増減の見通しについてはより悲観的に認識をしているようだ。国連の予測によれば2050年の日本の人口は1億741万人であるのに対し、今回の調査結果では一億人を切る(9800万人)という認識であった。

 では、日本人が現実を特別に認識できていないのか、というとそうではない。Ipsosが独自に認識ギャップの大きさを指標化したところ、日本は40カ国中27位で、相対的には現実を正しく認識できているという結果が出ている。最も認識と現実の乖離が大きい国がインドで、次いで中国、台湾であった。

 この調査によって、私たちの認識はどれだけあやふやで、現実と乖離が起きやすいかということがわかる。現実を正しく認識し、現実に即した判断をするためには、限界はあるだろうが出来る限り信頼できるファクトをチェックする情報接触態度を身につける必要があるということだろう。

認識と現実のギャップが大きい国々 トップ10

1, インド
2, 中国
3, 台湾
4, 南アフリカ
5, アメリカ
6, ブラジル
7, タイ
8, シンガポール
9, トルコ
10, インドネシア

Photo via CC0 Public Domain

Text by 酒田 宗一