夢の友達ロボットAmazon Echo、米国で大人気510万台販売 家電界の標準になる可能性も

 ドラえもんは未来から来たネコ型ロボット。人間の言葉を理解し、ポケットからどんなものでも出現させ、のび太たちを助けてくれる。モノクロの古いSF映画でも、人間に忠実なロボットが登場する。私たちの心の中には子供のころからそんなロボットが住み着いているのかもしれない。しかし人間と実生活のレベルでコミュニケーションが取れるロボットが社会に普及するのは、技術的にもう少し先だろう。人間の体の動きに近づけることは比較的やりやすいのかもしれない。難しいのは人間の言葉を理解し、正しく反応することではないだろうか。

◆Alexaというテクノロジー
 Amazonの「Alexa」は人間の言葉を理解し、人間の言葉で返答する音声認識のデジタル技術で一種の人工知能である。その機能を搭載したデバイスがEchoだ。正式にはAlexaシリーズと言われるように、Amazon Echoがメインではない。Echoは答えるためのスピーカーをもった高さ23.5センチの円筒形の機器で、Echo Dotは小型スピーカーのタイプ、Amazon Tapは外出時にも携行できる仕様になっている。

 「今日は何曜日?」「天気予報を教えて?」と聞けばEchoが答えてくれる。「カントリーを聞かせてちょうだい」と注文すればそれに応じてストリーミング音楽を流し、「ダイエットコーラ」と声をかければ、Amazonのショッピングリストに追加してくれる。あとでパソコンやスマートフォンから正式に商品を発注すればOK。家にある家電と連携させれば電源のオンオフも声でできる。

◆販売は好調
 調査会社CIRPによると、2014年の発売以来2年間で、Echoは米国内で510万台売れた。利用目的は、30%の人が天気などを質問して答えを聞く用途、40%がストリーミングなどを聞くオーディオスピーカーとしての用途、そして家の機器類のコントローラーとして使うのは10%強という調査結果がある。価格が日本円で2万円前後であることも売れている要因だろう。ストリーミング音楽を聞くためのワイヤレススピーカーだと割り切って購入すれば、さほど“働いてくれなくても”文句のない金額かもしれない。

 ただしあなどれないのは、音声データはAmazonのクラウドコンピューターが受け、そこから返信されるので、利用者の嗜好や行動パターンを学習してくれることだ。またサードパーティーが参加し、Alexaベースのアプリケーションや新たなデバイスを開発しており、面白い機能やサービスも登場している。音声認識の強みは、料理や運転中など手が離せないときも、「砂糖は何グラム?」「あと何キロ走ったらどこを右?」などと聞けるところだろう。スマートフォンの利用場面や用途の一部を肩代わりすることになる。もしAlexaベースの機器が家庭の音声認識のスタンダートになったとすると、様々なコンシューマー向けの製品がその影響下に置かれることになる。それを考えると落ち着かないデバイスメーカーの製品開発担当者もいるのではないか。

◆アメリカ人好み?
 米国以外ではイギリスやドイツでも販売されており、売れ行きが好調なだけにAmazonとしては世界への拡販の意気込みは強そうだ。ただし音声認識機能がポイントなだけに、多言語対応は時間を要するだろう。日本での販売の噂は聞かれるが正式な発表はまだない。

 考えてみるとアメリカ人はこの手のデバイスが好みだとも言える。広い家に大きな犬がいるというイメージのあるアメリカ。調査会社のGfKが世界22ヶ国のペットの飼育について調べたところ、アメリカ人の犬の飼育率は50%(2人に1人)、かたや日本は17%だった(2015年夏調査)。ベストガジェットを解説する『Wirecutter』は説明の中で「Echoはあなたの愛犬のようなもの。いつも耳を傾けているが、理解するだけ」とあったのがおもしろい。

 日本でも近年、コミュニケーションロボットが注目されている。機能のみならず、人間の求める情緒的なコミュニケーションに応えるのが次のテクノロジーなのかもしれない。Echoのような機械が人間の要求を間違って理解したとしても、「おいおい、そうじゃないだろう」と笑いかけられることを私たちは求めているようにも思える。子供のころからアニメーションの世界で親しんできた友達のようなロボットそのものではないだろうか。

 そして目の不自由な方や高齢者の世帯では、聞けば答えるという技術はかなりの支援力になるはずだ。

Text by 沢 葦夫