USJ、米メディア大手が完全子会社化 少子高齢化でも日本のテーマパーク大盛況のわけ

 ケーブルテレビ運営では全米最大のコムキャストが、ユニバーサル・スタジオ・ジャパン(USJ)の運営会社ユー・エス・ジェイを完全子会社化すると発表した。USJの2016年4~9月の入場者数は前年同期比で50万人増の700万人となり、過去最高を記録。コムキャストは、今後も高い収益が見込めると判断したようだ。今やUSJとライバルの東京ディズニーリゾート(TDR)は、世界のトップ・テーマパークに肩を並べる人気だ。少子高齢化で景気も悪い日本でテーマパークが好調な理由を、海外メディアはどう見ているのか。

◆人気下降からの復活。アトラクションも大ヒット
 USJは2001年に開業。2007年に東証マザーズに上場するが、業績不振で株価が低迷し、2009年に金融大手のゴールドマン・サックスグループが株式公開買い付けを行い、上場廃止となった。ロイターによれば、その後の改革が功を奏し、セールスは倍増(ドルベース)し、入園者数も70%以上増加。2014年にオープンしたハリー・ポッターのアトラクションも大ヒットとなり、日本の不景気とは無縁のようだと評されている。

 コムキャストはすでに2015年にUSJの51%の株式を取得しており、今回残りの49%をゴールドマン・サックスなどから買い取り、完全子会社化する。ロサンゼルス・タイムズ紙(LAT)によれば、USJは新アトラクション「ミニオン・パーク」を今年の4月にオープンさせ、2020年の東京五輪までには「スーパーマリオ・ブラザーズ」をフィーチャーしたアトラクションを投入する予定で、さらなる人気と収益アップを見込んでいる。

◆成長を支えるのは、日本人、女性、リピーター
 ロイターは、USJの成長は家計の消費が減少し節約に走る日本の消費者の傾向と一致しないとする。ブルームバーグも、長らく景気が低迷し、少子高齢化で20代以下より70代以上の人口のほうが多い日本で、なぜテーマパークが大盛況なのかと疑問を抱いている。

 理由の一つとして、円安による外国人観光客の貢献が考えられるが、ロイターによればUSJの利用者の90%は日本人だ。TDRでも、日本人来場者数のほうが圧倒的に多く、2016年の海外からの来場者は全体のわずか6%に過ぎない(ブルームバーグ)。つまり、テーマパークを訪れているのは日本人がメインだ。ブルームバーグは日本の消費支出はいまだに世界第3位だとし、日本経済は悲観論者たちが言うほど、不健康ではないとしている。

 では誰がテーマパークに行っているのだろう。遊園地は子供の行くところと思いがちだが、ブルームバーグはTDRでは子供の来園者は30%以下で全体の男女比は3対7だとし、テーマパークの収益アップに貢献するのは、働く女性だと見ている。

 さらにブルームバーグは、日本のテーマパークは、人口減少のために新しい来場者が毎年増えることを期待できないことから、リピーターを増やすことに力を入れており、それを可能にするのが安さだと述べる。USJとTDRの1日券はそれぞれ7600円と7400円だが、アメリカのディズニーワールド(レギュラー価格約2万円)、ディズニーランド(約1万2500円)、ユニバーサル・スタジオ・ハリウッド(約1万2000円)と比べると破格の安さで、東京ディズニーランドの場合、リピーターは90%に達すると説明している。

◆外国人観光客取り込みは必須。ライバルは中国?
 とは言え日本のテーマパークが今後さらなる成長を目指すなら、外国人の来場者を増やすことが必要だとロイターは言う。安倍首相は2020年までに訪日外国人観光客を年間4000万人にすると述べており、重要な収入源となることが期待される。

 ただし、お隣中国では上海ディズニーランドが開園し、2020年には北京でユニバーサル・スタジオがオープン予定で、日本のテーマパークから客が流れる可能性も指摘されている。また、フランスのディズニーランド・パリはテロによる観光客減少で不振が続いているとLATが報じており、地政学的なリスクも、今後の集客に影響するものと考えられている。

Text by 山川 真智子