国の東芝支援はあり得ない…「ゾンビ企業」を保護する日本に海外メディアが苦言

 日本を代表する企業の一つ、東芝が危機に陥っている。2015年の不正会計事件から立て直しを図ったものの、米原子力子会社ウエスチングハウス関連で巨額の損失が発生し、株価が急落。いまや稼ぎ頭のメモリー事業の売却を検討するまでに追い込まれている。海外メディアは、マネジメントが機能していない崩壊寸前の企業にもかかわらず生かされるだろうと述べ、これこそが日本経済が好転しない理由だと批判している。

◆復活は困難。今後を不安視する声も
 東芝は14日に予定されていた2016年4~12月期の決算発表を、さらなる精査が必要という理由で延期した。BBCは、その後に開かれた記者会見では、東芝側幹部と記者たちの無秩序な怒鳴り合いとなり、記者たちからは「ほかに何を隠している?」という罵声が幹部たちに飛んだと報じている。コンサルティング会社、フロスト&サリバンのマーク・アインシュタイン氏は、予定された決算発表が延期になるなど、時間にうるさい日本では聞いたことがないと述べ、東芝の状況がよほど厳しいのだろうとBBCに話している。

 東芝は暫定決算を発表しているが、2016年4~12月期の最終損益は4999億円の赤字で、2017年3月期業績予想では3900億円の赤字となっている。また、ウエスチングハウス関連の損失が累計7125億円で、昨年12月時点で1900億円を超える実質的な債務超過になっている。

 現在東芝は主力のメモリー事業の売却で危機を凌ごうとしているが、楽天証券経済研究所長兼チーフストラテジストの窪田真之氏は、通常会社立て直しには最も競争力のある事業を残し、不採算事業を切り離すのが普通で、メモリー事業売却では東芝の未来に希望はないと述べている(ロイター)。債権者側からも、メモリー事業売却後、バランスシートは改善するかもしれないが、その後はどうやって稼いでいくのか、と先行きを不安視する声も出ている(同)。

◆政府が助け舟?構造改革はどこへ行った
 バロンズ・アジアに寄稿したウィリアム ペセック氏は、粉飾決算、巨額の説明されない損失、不透明な意思決定など、スキャンダルを出し続けているのに、投資家はなぜ東芝株を持ち続けるのかと問う。BBCも東芝は不正会計を行い、まずい投資をし、それらの投資の状況についても嘘をついて来たと指摘。また常に解決策探しに失敗しており、その結果が今の惨状だと述べている。

 BBCは、本来このような企業は市場から退出すべきだが、世界で18万人以上を雇用する東芝を潰すことは日本の政治家にとっては困難で、結局日本政府が助けてしまうだろうと述べる。また、シャープ、タカタ、三菱自動車の例を見ても分かるように、日本では大企業であれば無秩序状態であっても生き残るとし、構造改革であったはずのアベノミクスの第三の矢が機能していないと見ている。

 ペセック氏も、そもそもアベノミクスは90%が日銀の金融緩和で、構造改革はせいぜい10%だとし、21世紀型の企業経営を目指して、イノベーション、効率性、利益によって雇用創出、収入増、デフレ脱却を狙ったはずなのに、すっかり失策と化してしまったと断じる。また、企業の収益力向上と不正監視のためスチュワードシップ・コード、コーポレートガバナンス・コードを導入したが、機能しているというには程遠い状況だと指摘。今こそ企業収益を増加させるためだけでなく企業の責任を高めるため、政府が動くべきだと述べている。

◆日本の未来のため、ゾンビ企業は退出を
 BBCはさらに、ゾンビ企業の延命は日本経済をダメにすると述べる。成功を夢見る若い起業家にとって、良い製品を作り、利益を上げ、帳簿をきちんと付けるのがビジネスであるという原則が、政府と大企業によって無視されるのは問題であり、大企業がルールを守らないのであれば、小さな会社が互角に戦える訳はないからだ。

 退出すべき企業に資金と救済という道を開き続けるのであれば、安倍首相の掲げたビジョンを実現することはできないとBBCは断じ、このままではビジネス慣習の中に潜んでいる日本株式会社の腐敗物を取り除くこともできないと述べている。

Text by 山川 真智子