LINE MUSIC、“独特”日本市場を変えるか?海外メディア注目 海外ではAppleが参入

 LINEが、定額制オンデマンド型音楽配信サービス「LINE MUSIC」を、11日から開始した。海外から見れば、日本は、デジタル・セールスがCDセールスにおよばない、不思議な国らしい。メッセージ・アプリとして圧倒的強さを誇るLINEの参入で、日本の音楽市場が変わるのでは、と海外メディアが注目している。

◆価格は手ごろでメッセージとも連携
 ウォール・ストリート・ジャーナル紙(WSJ)によれば、LINE MUSICは150万曲以上のラインアップを持ち、アクセス無制限なら一ヶ月1000円、トータル20時間までのアクセスで一ヶ月500円のプランを提供する。ニューヨーク・タイムズ紙(NYT)は、LINE MUSICの強みは、LINEのメッセージ・アプリとの統合ができることだと指摘。ユーザーが楽曲やプレイリストを、アプリを通じて送り合うことが可能になるという。

 LINE MUSICの社長、舛田淳氏は、「No.1の音楽配信サービスを目指し、ユーザーの音楽への関心を高め、音楽産業の盛り上げを図りたい」とコメント(NYT)。同社はサービス開始後の2ヶ月を無料キャンペーン期間としており、来年には楽曲数を3,000万曲に増やすとしている(AFP)。

◆海外には見られない日本独特の事情
 日本の音楽市場はアメリカに次ぎ世界第2位の規模を持つが、セールスの78%はCDなどのパッケージ・セールスから来ており、デジタルの売り上げが70%を占めるアメリカとは対照的だ、とAFPは指摘する。その理由として、日本の消費者は、物として音楽を収集するのを好む傾向があるとし、ジャケットが違えば、同じアルバムを何枚も購入する人もいると説明する。さらに、CDにコンサートチケット、または優先席などの特典がついて来たり、AKB48のようにCDに選挙用の投票券がついている場合もあり、CDを買わせるさまざまな策が講じられていると述べる。

 過去には、ソニーやDeNAなどが音楽配信サービスに乗り出したが、いずれも失敗。多くの制作会社が既存のCD販売店ルートを重視していることや、著作権の問題が、ストリーミング・ビジネスの障害になっているようだ。モバイル業界のコンサルタント、セルカン・トト氏は、LINEにとっての課題は、「同業者との競争だけでなく、日本の音楽市場のウェブへの嫌悪に打ち勝つこと、妥当な時間内に十分なコンテンツをサービスに加えること、そして消費者のCD好きという日本ならではの傾向」だと述べている(AFP)。

◆未来を牛耳るのはやはりあの会社?
 さて、世界ではすでにSpotify、Rhapsody、Tidalなどが、音楽ストリーミング・サービスを展開中。そして6月30日から、10億人以上のiPhoneとiPadユーザーを持つアップルが、同様のサービスを「Apple Music」の名で開始する発表した。

 米CNBCに解説をした、ELメディアの最高経営責任者、ジョシュア・カッツ氏は、後発といえども、アップルはあっという間に市場を支配し、ライバルたちは対抗するか、駆逐されるかのどちらかを迫られると述べる。同氏は、他社は音楽を売ることで利益を出さなければならないが、アップルにその必要はないと指摘。アップルの狙いは、音楽を売ることにより、アップル製品を買ってくれるユーザーを自社の生態系の中に囲い込むことだとし、ソフト、ハード、ユーザー・データをコントロールし、潤沢な資金を持つアップルが、断然有利であることを示した。

 NYTによれば、アップルは6月開始時点での、日本でのApple Musicの展開には、まだ言及していないという。アップルのいない間に、LINEがどこまで音楽ストリーミングを広げていけるのか、今後の展開に注目したい。

Text by NewSphere 編集部