ロボット導入でも、人手不足変わらず? 日本の製造業の実状に海外注目

 日本の長時間労働文化に対し、ついに政府が対策を講じることになった、と英ガーディアンが報じた。政府は今国会に労働基準法改正案を提出し、企業に対し有給休暇の義務付け日数を「年5日間」とすることを検討している。働き方は変わるのか。フィナンシャル・タイムズ紙(FT)は、日本の製造業におけるロボット導入について注目している。

◆日本の長時間労働に変化?
 ガーディアンは、下記のように語る。日本の熱心な労働文化は経済大国化に寄与し、日本の企業戦士の忠誠心は世界的な敬意を受けたかもしれない。しかしこれは、その他の部分を排除した結果だ。実際、日本の出生率は低下し、人口は減少している。家族を形作るための時間が不足しているためだ。

 安倍首相も最近、日本の労働文化は「長時間労働という間違った方向に進んだ」と述べたという。

◆結局人が足りない
 日本人が休暇を取れないのは、労働力不足のためだろうか。それならば、人の代わりにロボットを職場に導入すれば良い、と考える人もいるだろう。
 
 実際、日本はロボット開発が盛んだ。FTは、日本の産業用ロボットメーカー、ファナックや安川電機は、世界のロボット市場を牽引している、と報じている。

 しかしながら、安川電機の津田純嗣社長は、人の手の感覚はとても精密で、そのような手を持つロボットの開発は、頭脳となるコンピューターの発達ほど早く進まない、とFTに話した。津田氏は、「知能を持つ開発途中のロボットは多くあるが、まだ何もできていない」「コンピューターのように急激に開発が進むことはないだろう。段階的に、少しずつだ」(FT)と予測している。

 この発言は、ロボットが大量の失業者を生むと主張する未来学者や、既に高額なロボットを導入している企業の管理者の見方とは、深い隔たりがある、とFTは指摘した。津田氏は、ロボットを導入した工場に行けば、人がやらなければいけない仕事がまだまだあることがわかると話す。「まだ、人がやるべき仕事は多い。非人間的な仕事は人がやらなくても良い。できるだけ早くにそういう仕事はロボット化すべきだ」(FT)とし、工場だけでなく、倉庫や流通センターで、ロボットは活躍できるだろうと、さらに導入が拡大することを期待している。

 ただ、同氏は、ロボット市場の成長が抑制されているとみていて、その理由については、皮肉ながら、ロボットを使いこなす技術者が不足しているためだと説明した。「ロボットを使うには、ある一定のレベルを持った技術者が必要だ」(FT)と“人”が足りない現実を嘆いた。

Text by NewSphere 編集部