モンスト、パズドラ超えの要因は? 協力プレイ、mixi連携不要…米紙指摘

 日本のモバイルゲーム・アプリ界では、ガンホーの「パズル&ドラゴンズ」(以下「パズドラ」)が圧倒的な強さを誇り、2年間、ストアの売上首位を独占していた(Google Play、App Store)。昨今その座を脅かしているのが、ミクシィの「モンスターストライク」(以下「モンスト」)だ。11月には、ついにその座をパズドラから奪った。海外進出も果たした同アプリに、海外メディアも注目し始めている。

◆mixiの栄枯盛衰
 「モンスト」を提供しているのは、かつて一世を風靡したSNS(ソーシャル・ネットワーク・サービス)の「mixi」を運営する株式会社ミクシィだ。

 ニューヨーク・タイムズ紙(以下「NYT」)はmixiの盛衰の歴史を語っている。mixiが公開されたのは2004年の2月。その2年後には東証マザーズ上場を果たし、2007年には株式の時価総額が30億ドルを超えた。最盛期にはユーザー数は2700万人で、「日本人の5人に1人」がmixiアカウントを持っていたことになる。

 しかし、他の多くの例に漏れず、mixiも衰退していく。ユーザーは他のSNSへ流出していき、2013年には、1ヶ月に1回以上ログインするユーザーは最盛時の半分にまで減少していた。一時、株価は最高時の5%まで下落した。

◆パズドラを抜いて売上げトップに
 ここでミクシィ社はモバイルゲーム市場へと大きく舵を切った。当時のゲーム開発事業のトップであり、現社長を務める森田仁基氏は「大きな賭けだった」と述べた(NYT)。500万ドルを掛けて「スマホ用ゲームとしては非常に積極的な」プロモーションが行われた。

 この「賭け」は当たった。『Metaps ブログ』によると、2013年10月にスタートしたモンストは、2014年5月には、1日の売上が初めてパズドラを抜いてトップとなった。Metaps社ではアプリ毎に売上が首位となった日数を記録し集計しているが、10月にはGoogle Playで、11月にはGoogle PlayとApp Storeの双方で、「日計売上が首位となった日数」についてパズドラを上回った。

 また同ブログは、ごく限られた例外を除いては、売上げ首位を獲得するアプリがモンストとパズドラの2つのみであることを指摘し、この2つのアプリの競争が熾烈なものであることを窺い知ることができる、と述べている。

 NYTによると、昨年、ミクシィ社は株式市場での損失を埋め合わせ、また投資が再流入したという。最近の四半期のコンテンツ事業売上高は194億円に達し、全体の90%を占めている。

 モンストはダウンロードと基本プレイは無料で、ゲームを有利に進めるアイテムを購入する「アイテム課金」方式だ。アイテムを大量に購入する一部のプレーヤーが総売り上げを伸ばしている、と同紙は見ている。「一人当たりでは、この惑星上で最も収益性が高いゲーム」である、とモバイルゲーム市場コンサルタントのセルカン・トト氏はいう。

◆モンスト成功の要因は?
 NYTは、「廃れかけた自前のSNSと結びつける手間を省いた」のがモンストの成功の一因であると見ているようだ。同紙は松江のある高校生の話を引用している。曰く、SNSとしてのmixiは聞いたことがなく、「その会社について知ってるのは、モンストの会社ってことだけ」だそうだ。

 モンストは一人でプレイする他に、ブルートゥースを使って近くにいる人と、また、LINEのネットワークを利用して遠くの友達とも遊ぶことができる。公式サイトによると、複数で協力してプレイすることでゲームの展開が有利になる。NYTは、「顔を突き合わせてできる」ということで他のゲームとの差別化を図ろうとした、という森田社長の意図を伝えている。

 また、モンストの「アイテム課金」モデルは、拡張とアイテムの更新で維持することができ、「決して終わらないという点でソーシャルネットワークのようだ」と前出のトト氏は述べている。そのため、ミクシィ社はこの分野で成長する時間的余裕がある、と同氏は見る。

Text by NewSphere 編集部