タカタ、なぜ全米リコールしない?現地紙批判 原因不明でフラストレーション高まる

 タカタの製造するエアバッグのリコール問題で、3日、アメリカ議会で2回目の公聴会が開かれた。タカタの対応を巡り、米議会では批判の声が挙がっている。

◆インフレーターに欠陥?
 ウォール・ストリート・ジャーナル紙(WSJ)によれば、問題となっているのは、タカタのエアバッグのインフレーターで、衝突の際、過剰な力がかかると爆発し、金属片が車内に放出される危険があるとされる。WSJは、アメリカとマレーシアで起きた、ホンダ車の5件の死亡事故との関連を報じている。

 6月から対象車のリコールがアメリカで始まったが、そのほとんどが湿度の高いフロリダ、ハワイ、プエルトリコ、バージン諸島に限定された。湿気がエアバックの強烈な爆発を引き起こす可能性があると、タカタが判断したためだ。タカタのエアバックを使用していたホンダは、すでに世界で620万台をリコールしている(ニューヨーク・タイムズ紙、以下NYT)。

◆リコール拡大に反論
 事態を重く見た米運輸省高速道路交通安全局(NHTSA)は、11月にエアバッグのリコールを全米で行うようタカタに要求。これに対し、タカタは2日に書面で命令を拒絶していた。

 NHTSAへの返答の中で、タカタの商品安全部門の責任者、マイク・レイン氏は、「NHTSAの規則では、自動車メーカーと交換部品のメーカーだけが、製品が安全性に関連した欠陥を含むかどうかを誠意を持って決定し、欠陥があれば、リコールを行う必要がある」と記し、リコールの責任は車両の製造者が負うもので、オリジナル部品メーカーのタカタへは、NHTSAの権限は及ばないと主張した(NYT)。

 タカタ、ホンダ、NHTSAが顔を合わせた公聴会では、タカタの品質保証部門の清水博シニアバイスプレジデントが、全米リコールへの拡大には、現時点では「科学的根拠がない」と説明(NYT)。また、リコールが拡大すれば、新たに800万台が対象となるため、最も危険にさらされている、高湿度地域への取り換え部品供給が減る可能性を指摘し、理解を求めた(WSJ)。

 公聴会後、出席した議員たちは、タカタの対応を批判。「タカタは全米リコールを拒否することで、さらなる人命を危険にさらしている」、「エアバッグ問題は複雑だが、複雑さが無能さの言い訳とはならない」など、厳しいコメントが噴出した(ブルームバーグ)。

◆ホンダはリコールに前向き
 一方ホンダは、タカタのエアバッグ搭載車のリコールを全米50州に拡大すると発表。ホンダノースアメリカのリック・ショステック上級副社長は、部品不足を懸念し、交換用部品の供給を受けるため、タカタと競合するメーカーと、すでに交渉をしていると述べた(ブルームバーグ)。

 また、トヨタとホンダは、自動車業界に対し、独自に問題あるエアバッグをテストするよう、共同イニシアチブを確立することを求めているという(WSJ)。

 今回のエアバッグ問題では、根本的原因は明らかになっていない。NHTSAのフリードマン氏は「タカタも自動車メーカーも、だれも原因を見つけられないことが最大のイライラのもとのひとつ」と述べ、関連業界に解決の法的責任があると指摘している(WSJ)。

Text by NewSphere 編集部