国産初ジェット『MRJ』、“20年で世界2位に成長”と英専門家が期待 その理由は?
三菱重工業 と傘下の三菱航空機は18日、三菱リージョナルジェット(MRJ)の初号機をメディアや関係者に披露する。披露式典は名古屋空港内にある三菱重工小牧南工場で行われる。
三菱は2008年、国産旅客機の開発を始めると発表。その後、計画は3年半遅れ、初飛行の期日は、3度延期となっている。
◆空の快適な空間を提供
三菱航空機の川井昭陽社長は15日、「これまで多くの人に、いつ飛行できるのか?と訊かれた」「そしてついに、機体は飛び立つ準備がほぼ完了するところまで出来上がった」(ウォール・ストリート・ジャーナル紙(以下WSJ))と感慨深げだ。
MRJの初号機は90席クラスタイプで、2015年4-6月に国内で試験飛行を実施。2017年に納入する計画だ。これまでに国内外から合計407機を受注した(ブルームバーグ)。新型機完成で同社は、競争の激しさが増すリージョナルジェット(地域間輸送用旅客機)の国際市場に参入することになる。
初号機は、米プラット・アンド・ホイットニーの最新型エンジンを搭載し、既存のリージョナルジェットに比べ、燃費が良く、静かで、快適な乗り心地だという。燃料の消費を同型航空機よりも20%削減した。また、貨物室を機体後部に設計したことにより、客室の天井高が高く空間に余裕がある(WSJ)。
◆専門家は「勝機はある」と予想
米航空宇宙関連コンサルティング会社のリチャード・アボラフィア氏は、「航空機のお披露目は、有意義な進展だ。特にマーケティング戦略として有効だ」と評価した。また、受注の数字についても良いスタートだと述べ、「MRJは事業が市場を主導する大企業に十分対抗できることを証明する必要がある」(ブルームバーグ)と今後も努力が必要だとしている。
リージョナルジェット市場はブラジルのエンブラエルとカナダのボンバルディアに長いことほとんどのシェアを握られてきた。
MRJは今後20年間で、世界のリージョナルジェット市場で50%のシェアを獲得する目標だ。川井氏は、ブルームバーグニュースとのインタビューで、小型ジェット機市場は今後20年間で5,000機以上の需要がある、と予想している。
英アセンド・フライトグローバル・コンサルタンシーのロブ・モリス氏は、出遅れはしたものの、MRJは2033年までに、世界全体で約4,000機のリージョナルジェット受注のうち、22%、280億ドルを獲得することが出来るだろう、とみている。同時期に61%を占めると予想されるエンブラエルに次ぎ、世界第2位にまで成長する可能性があるという。また、客室の広さと、燃費の良さは、「市場で競う際、真の強みとなるだろう」(WSJ)とも述べた。
しかし、競合各社も燃費の向上など改良をすすめる対策を立てている。エンブラエルは、今後新型機にMRJと同じエンジンを搭載する計画だ(WSJ)。
また、MRJだけが新参者ではない。ロシアのスホーイ・スーパージェット100は、2011年にアエロフロート・ロシア航空の定期便での運行を開始。中国のARJ21-700は、同当局の認可待ちだが、年内には成都航空で運行が開始されるとみられている。
“質の良さ”で国際競争に勝ち上がりたい日本だが、目論見はうまくいくだろうか。期待は大きい。