大林組「宇宙エレベーター」構想に世界が注目 2050年、ロケットの時代が終わる?

 東京スカイツリーの建設などを手掛けた大林組は、地球と宇宙をつなぐ宇宙エレベーターを、2050年の完成を目指して、開発中である。

 2012年の発表以来、同社の構想はたびたびメディアに取り上げられているが、オーストラリアABCによる22日の報道で、海外からの注目が一層集まっている。

【SFが現実に、カギはナノテクノロジー】
 宇宙エレベーターの概念自体は新しいものではないが、その実現には、非常に強度の高い材料が必要なため、長らく夢物語として扱われてきた。しかし、炭素繊維「カーボンナノチューブ」の登場で、実現可能性が大いに高まった。大林組の宇宙エレベーターにも「カーボンナノチューブ」のケーブルが使われる。

「カーボンナノの抗張力は鉄鋼ケーブルの100倍」と、大林組の調査開発マネージャー・石川洋二氏は、ABCに語っている。

 大林組のサイトによると、宇宙エレベーターのケーブルの長さは9万6,000kmである。しかし、現在の技術では、3cmのナノチューブしか作ることができない。石川氏は「2030年までには製造可能」とABCに答えている。

 宇宙エレベーターは、地球の静止軌道上にステーションが建設され、そこから上下にケーブルが伸ばされ、昇降機を上り下りさせる。地球から十分に離れているため、宇宙エレベーターの回転エネルギーは地球の引力よりも大きい、とロシア『RIAノーボスチ』は指摘している。

【環境にやさしくコスト安】
 現在、宇宙空間に物資や人間を運ぶ手段として使われているロケットは、大気圏を脱出するために、多量の燃料が必要である。宇宙エレベーターの登場により、非常に費用が掛かり危険なロケットの時代は終わる、とABCは指摘する。

 宇宙エレベーターは効率よく、多量の物資を運ぶことができる。スペースシャトルで宇宙に物資を運ぶと、1kg当たり22,000ドルかかるが、宇宙エレベーターは200ドルと推定されている(ABC)。

【エネルギー問題解決にも】
 宇宙エレベーターは、世界のエネルギー問題を解決することもできる。宇宙エレベーターは安くて大量の太陽エネルギーを地球にもたらし、宇宙に核廃棄物を運び出せる、と期待されている(RYOT)。

 宇宙エレベーターが物資を運搬できるようになるころには、核燃料廃棄物を廃棄するのに最適な場所や地球外に運び出すことが賢明で安全なことか、深い理解が得られているだろう、と同メディアは伝えている。

 大林組の宇宙エレベーターは、物資だけでなく、人も30人程度運搬できるという。技術の進展次第では、宇宙エレベーターで観光旅行に行ける日も遠くはないかもしれない。

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Text by NewSphere 編集部