JAL、国産ジェット「MRJ」を32機発注 日本の航空宇宙戦略に海外メディアも注目

 日本航空(JAL)は28日、『三菱リージョナルジェット(MRJ)』を32機導入することで基本合意したと発表した。MRJは、三菱重工の子会社、三菱航空機が開発中の初の国産小型ジェット旅客機だ。来年のテスト飛行を経て2017年に全日空(ANA)に初めて25機が納入される予定だが、JALの導入決定で国内2大キャリアが揃って国産ジェット旅客機の誕生を後押しすることとなった。

 三菱航空機は20年後には世界シェアの半分を確保するという強気の目標を掲げており、海外メディアも注目している。

【国内線で2021年に運用開始予定】
 発表によれば、JALは将来、MRJを国内線地方ネットワークの主力にしたい考えだ。導入が決定した32機は、2021年中をめどに傘下のジェイエアでの運行を計画している。発注額は公表していないが、ブルームバーグは匿名の事情通の情報として、合計1500億円という数字を挙げている。

 MRJは、新開発の「ギヤードターボファンエンジン」を搭載し、低燃費を売りにしている。現行の同型機(70-90席)に比べて20%近く燃費を抑えることに成功したという。しかし、開発は当初予定よりも大幅に遅れており、2011年に予定されていたテスト飛行は技術的な問題で繰り返し延期されている。今のタイムスケジュールでは2015年に初飛行、2017年に供給開始となっている。

 国内の経済アナリストの一人は、「今回合意に至ったのは、JALがスケジュールに間に合うと判断したということだろう」とブルームバーグに答えている。

【世界シェアの半分を目指すが・・・】
 ウォールストリート・ジャーナル紙とブルームバーグによれば、MRJはJALとの契約に先立ち、既にアメリカのスカイウエストの100機を筆頭に335機(うち171機が確定オーダー)を受注している。

 三菱航空機は、今後20年間で5000機の販売を目指しているが、これが実現すればリージョナルジェットの2大メーカー、エンブラエル(ブラジル)とボンバルディア(カナダ)の合計を上回り、世界シェアのおよそ半分を占めることになる。ロイターは、この目標を達成するほどの勢いを得るには、現在の受注状況ではまだ足りないという専門家の見方を示している。

 JALは今回、MRJと同時にエンブラエル社製のE170(76席)とE190(104席)を合計15機発注した。エンブラエルもボンバルディアも次世代機ではMRJと同型のエンジンを積むとしており、MRJの開発がこれ以上遅れれば低燃費という優位性は失われることになりそうだ(ロイター)。

【国産ジェット機の誕生を官民でバックアップ】
 国もこの初の国産ジェット旅客機の開発を全面的にバックアップしているが、ロイターは「日本政府は民間契約によってのみプロジェクトの成功を計っているわけではない」と記す。国家レベルでの狙いは「航空宇宙産業の技術者の育成・維持」「海外大手航空機メーカーからの新たなビジネスチャンスの獲得」などだという。JALも、今回発表したプレスリリースで次のように述べている。

「JALグループとしても、エアラインのノウハウを活用して、MRJの導入のみならず、三菱航空機に対して全面的な支援を行うことで、世界に誇れる国産ジェット旅客機の誕生に貢献してまいります」

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Text by NewSphere 編集部