日本vs中国 チリで銅獲得競争 日本企業の積極的な採掘権取得に地元紙注目

 日本はかつて銅の産出国であった。しかし、今では全て、輸入に頼っている。銅の需要は電線から始まって、あらゆる分野で使用されている。日本は現在、銅精鉱でパンパシフィック社や住友グループなど数社がおよそ500万トン輸入している。

【パンパシフィック・カッパー社 】
 銅の需要がこれからも拡大する中で、銅の輸入を主要目的として2001年に設立された会社がある。日鉱金属と三井金属鉱業が出資して出来た、パンパシフィック・カッパー社である。その目指すものは世界の資源開発と原料の調達で、その中で一番重要な事業は銅の調達である。日本の輸入銅の30%を担っているのが同社である。

【新しいビクーニャ鉱山地帯 】
 チリには24の銅山がある。新しい鉱山の発掘が必要になっているが、生産効率の良い鉱山は既に開発が進んでおり、新しい鉱山となると距離的にかなり内陸部にあったり、深く掘り下げて行かねばならないなど、生産性において効率の良くないケースが多い。

 アルゼンチンに本社を置く、中南米の合併・買収の専門誌「ディフシオンとアドゥキシシオン」によると、パンパシフィックは2006年に海抜4,200~4,600mにあるカセロネス鉱山の採掘権益を取得し、28年間の採掘が可能と予測されるこの鉱山で、年間12万トンの銅と3千トンのモリブデンの採掘を行なっている。そして2007年にはペルーのケチュア鉱山の採掘権益も取得している。

 同社が非常に期待しているのが2012年に採掘権益を取得したビクーニャ鉱山地帯である。カナダの資源発掘の専門会社NGExからこの地帯の40%の採掘権益を取得している。チリとアルゼンチンの国境をまたがる24,000ヘクタールの三角地帯で、今年から年間14万トンの銅の採掘を予定している、と同誌は報じている。

【中国からの脅威】
 19~20世紀にチリは既に銅の産出国として知られていたが、20世紀の半ばに米国が本格的な採掘を始め、1980年代になって世界No.1の産出国となった。国営の銅開発公社(CODELCO)が開発のコントロールと販売の管理を行なっている。

 1990-2000年には銅の世界的な需要が急増し、銅はチリの全輸出額の53%を占めるまでになっている。日本が輸入している銅の中でチリからのものは48%である。しかし、この輸入の妨げとなってきているのが中国の買付けである。レポート「チリの鉱業事情」にて言及されているが、チリから日本向けの銅の輸出は13%であるが、中国向けは31%となっており、2009年には20%であったのが、この3、4年で一挙に11%も中国の買付けが増えているのである。

 チリの鉱山専門誌においても昨年の中国向けの銅の輸出は前年比4%の伸びを記録した、と報じている。また中国はチリにとって買付けボリュームにおいて最大の顧客である、としている。

 北京のチャイナ・ファイルの分析では、チリは「米中両国を天秤に掛け、中国の方に傾いている」と指摘している。それは核問題や大気汚染問題について、チリは中国の立場に配慮してあまり干渉しない立場を取っていることでも窺われる、としている。その背景にはチリの中国への輸出依存度が益々高くなっているからである。

 銅の需要の増大と言えば、スペインでは銅線の盗難事件が増えている。今年3月と4月にもスペインのエル・ムンド紙やエル・エコノミスト経済専門誌でも取り上げているほどに銅線の盗難が横行しているのである。闇でそれを購入する組織が存在していて中国に輸出するのである、というのはスペインの電気照明業界でもこの数年よく語り続けられていることである。

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Text by NewSphere 編集部