トイレまでハッキングされる? スマート家電のリスクを海外メディア報道

 スマート家電の普及が進み、スマートフォン1台で、家の中にあるさまざまなものをコントロールできるようになってきた。操作する対象が、たとえ同じ部屋の中、目の前にあっても、いったん、公共の空間であるインターネットを経由していることがある。ネットワークに接続される機器の数は、増える一方だ。スマート家電は、セキュリティーにかけても十分に「スマート」なのか、海外メディアが相次いで問題を提起している。

【トイレがハッキングされる? ネットを騒がせたニュース】
 昨年8月、ネットを騒がせたニュースがあった。日本のLIXILが開発したシャワートイレ「サティス」のハイエンド機種には、スマートフォンをリモコンとして使用できる機能がある。スマートフォンに専用アプリ「My SATIS」をインストールし、Bluetoothで直接通信する仕組みだ。アメリカの情報セキュリティー会社トラストウエーブによると、この機能が第三者に乗っ取られる可能性がある、というのだ。

 一般的に、Bluetooth接続時には“ペアリング”作業が必要となる。その際、接続する機器を確認するために、パスキーの入力を求められることがある。ところが「My SATIS」では、このパスキーが‘0000’に固定されていて、変更することができない。そのため「My SATIS」をインストールしたスマートフォンで、任意の「サティス」をコントロールできてしまうケースがある。「攻撃者はトイレのふたを不意に開け閉めし、ビデや空気乾燥機能を作動させて、ユーザーに不安ないし強い心配をもたらす可能性がある」、とトラストウエーブは述べている。

 しかしながら、Bluetoothは有効範囲がそれほど広くないこと、着座状態でないとシャワー機能が動作しないことなど、条件が多いため、実際に悪用するには相当な困難が伴う。LIXILは「極めて稀なケース」との見解を示している。

 それでも、このようなトイレの存在自体が珍しかったこともあって、ネットでは大いに話題になった。フォーブス誌は、このニュースが話題となった理由について、「わたしたち自身が最も脆弱である瞬間の一つに、ハッキングされるという考えは、ばかばかしくもあり、恐ろしくもあるから」とみている。

【インターネットにつながっていると…】
 インターネットに接続される家電器具では、ハッキングの危険性は高まる。

 今年4月、オハイオ州のある夫婦は、10ヶ月になる娘の部屋の、ネットにつないだベビーモニターから、見知らぬ男の声が聞こえていることに気づいたという。男は卑猥な言葉を叫んで、赤ん坊を起こそうとしていた、とブルームバーグは伝える。

 『U.S.ニュース&ワールドレポート』によると、同様の事件は、昨年、テキサス州でも起こっていたようだ。また昨年、ミス・ティーンUSAのキャシディー・ウルフさんは、自分のパソコンのウェブカメラを乗っ取られ、寝室で脱衣中の写真を盗撮されたそうだ。犯人は彼女を恐喝したという。犯人は元クラスメートで、懲役1年6ヶ月の判決を下された。

【家電器具のハッキングが、深刻な被害に結びつく?】
 ハッカーが家の中の機器にアクセスし、それを使って宅内ネットワークを監視できるようになると、持ち主のユーザー名とパスワードを調べて、金銭がらみの情報にたどり着く可能性がある、とセキュリティー専門家は『U.S.ニュース&ワールドレポート』に述べている。

 ブルームバーグは、家電器具の些細なセキュリティー上の欠陥のせいで、悪人に、家庭生活を混乱させ、利用価値のある個人情報を集めさせ、さらに盗んだ情報を使って金をゆすることまで許してしまう、と警告する。現在、そのような機器を標的にしているハッカーは多くないが、ひとたび、それらを利用することで金を得る確かな方法が生まれたら、その状況も変わるだろう、とセキュリティーに詳しい人物は語っている。

「どんなシステムにも、ハッキングされる可能性はあります…もしも誰かが、本当にアクセスしたいと思っており、十分なリソースがあれば、彼らはそれをなし得るでしょう」と、米ノバサウスイースタン大学コンピューター・情報科学大学院のエリック・エッカーマン学長は語っている(『U.S.ニュース&ワールドレポート』)。

 専門家らは、防御策として、まずデフォルトのユーザー名とパスワードを変更すること、そして開発元から提供されるアップデートは必ず適用することを忠告している。

【「モノのインターネット」時代】
 ブルームバーグのコメント欄では、

・どうしてWi-Fi接続できるトイレや家電器具が必要なのか、誰かわたしに説明してくれませんかね。わたしたちの社会全体が、あまりにも怠け者になってしまっていて、ソファにどっかりと座ったまま、皿洗い機をオンする必要があるのかね。

など、そもそもスマート家電を始めとして、何でもネットに接続することがどうして必要なのか、という話題が語られていた。

 いずれ到来すると言われている「モノのインターネット」時代。ブルームバーグによると、2020年までには、スマートフォン、タブレット、パソコンの他に、その4倍近く、およそ260億台の機器がインターネットに接続される可能性があるという。現在は30億台だという。

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Text by NewSphere 編集部