ヤフー、ソフトバンクに反抗か? イー・アクセス買収中止発表の背景を海外メディア分析

 ヤフーは19日、イー・アクセスの子会社化を中止すると発表した。イー・アクセスの株式の99. 68%は、ヤフーの親会社でもあるソフトバンクが保有している。3月、ヤフーはそれを3240億円で取得すると発表していた。しかし、投資家やアナリストの反応は、かなり冷ややかなものだった。

【スマホ、タブレット向けサービスの増強を狙っていた】
 イー・アクセスは、モバイルブロードバンドの提供など、データ通信を中心とした事業を行っている。今年6月1日には、同社はPHS事業者のウィルコムを吸収合併することになっている。また後日、社名を「ワイモバイル」に変更する予定だ。

 この吸収合併の直後にイー・アクセスを子会社化する計画を、ヤフーは3月27日に発表していた。スマートフォン、タブレットを通じたインターネットサービス事業の成長を目的としたものだったと、AFPは伝えている。

 しかし、その後の協議によって、ヤフーがイー・アクセスを子会社化して、自らインフラを手掛けるよりも、独立した2社が、協業の形で事業を進めていくほうがが望ましいとの結論に至ったという。

【市場の反応は、冷淡の一言】
 ロイター、ブルームバーグは、この計画について、投資家やアナリストの間で、当初から懐疑的な見方があったことを伝えている。ヤフーの株価は、この計画の発表後、25%下がっている、とロイターは報じている。下落は止まらず、今年の最安値を更新し続ける中で、このたびの中止の発表となった。

 イー・アクセスは、2012年末、ソフトバンクによって子会社化された。その際、ソフトバンクによる買収価格は、1800億円だった。今回の、ヤフーによる買収予定価格は、それより80%高い3240億円だった。それが適切な額かどうかで、アナリストから疑問の声が上がっていた、とブルームバーグは報じる。

【海外で企業買収を積極的に進める、ソフトバンクへの資金提供か?】
 ロイターはこの計画を、ヤフーからソフトバンクへの資金の移動を目的とした、ソフトバンク・グループ内での資産の再編成と捉えた。ソフトバンクは現在、海外での企業買収戦略を、積極的に推し進めている。昨年には、アメリカ第3位の携帯電話会社のスプリント社を、約1.8兆円で買収した。さらに、第4位の米Tモバイルを買収する試みもあるという。

 中国のアリババグループの、アメリカ証券市場での新規上場によって、ソフトバンクには6兆円以上の含み益が生じるとも言われている。それでも、現金資産は多いほうがいい。

 日経新聞によると、イー・アクセスは、ソフトバンクから約1300億円を借り入れている。計画では、子会社化後、ヤフーからイー・アクセスに対して新たに融資を行い、ソフトバンクからの借入分は、それで返済する予定だった。したがって、ソフトバンクには、ヤフーから約4500億円が渡ることになっていた。

【株式の99.68%がありながら、議決権は33.29%?】
 ソフトバンクは、イー・アクセスの株式の99.68%を保有しているが、規制のために、議決権のある株は33.29%しか保有していない、とロイターは伝えている。

 日本の電波監理は総務省が担当しており、携帯電話会社への電波帯域の割り当ても、同省が行っている。2012年、TVの地デジ化によって空きのできた周波数帯が、新たに携帯電話用に割り当てられた。そのうちの1つ、「プラチナバンド」と呼ばれる900MHz帯は、ソフトバンクに認可された。

 その後の別の周波数帯の申請では、公平性の観点から、ソフトバンクは実質上、申請できないことになっていた。その中の1つを、当時は別会社だったイー・アクセスが取得した。その後、程なくして、ソフトバンクがイー・アクセスを子会社化することになった。

 仮に、周波数帯の申請時に、ソフトバンクがイー・アクセスの議決権を3分の1以上持っていたら、申請は認められていなかった可能性が高い。事後の子会社化でも、これが当てはまるかどうかで、問題となる懸念があったため、ソフトバンク側は自主的に議決権の比率を下げた。

 ブルームバーグは、今回の子会社化中止について、「ヤフーはとうとう、筆頭株主のソフトバンクに立ち向かうようになっていて、ソフトバンクから、イー・アクセスの(議決権のない)少数株式を引き受けることを拒んでいるようです」という、BGCパートナーズの日本株販売担当マネージャーのコメントを伝えている。

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Text by NewSphere 編集部