ソニー、1283億円の赤字 改革進むパナ・シャープと対照的…海外紙は厳しい見方

 ソニーは14日、2014年3月期連結決算が1283億円の赤字であることを発表した。また今期(2015年3月期)の見通しについては500億円の赤字を見込んでいるという。

【改革が痛手に】
 ブルームバーグによると、損失の多くは構造改革にともなう出費によるものだという。

 平井一夫社長兼CEOは、テレビやパソコン事業の低迷によるスランプを克服すべく、この分野の整理を断行した。パソコン事業は日本産業パートナーズへ売却し、テレビ事業も今期中に分社化する。しかしこの清算にかかる費用が足を引っ張った。パソコン事業では800億円の損失が見込まれているが、その内の約360億円が事業の収束に伴う費用だと同誌は述べる。

 また事業削減に伴うリストラも出費を伴った。ハドソン•スクエア•リサーチのアナリスト、ダニエル•エルンスト氏は「ソニーは売る商品が減った分、販売人員の数も減らした。そのため多額の解雇手当を払わなければならなくなり、その傾向はとくにヨーロッパで顕著だった」と語っているという。

 「問題は、これで来年はよくなるというのか、ということだ。6~7年に渡る構造改革の末、市場はそこまで辛抱強く待ってくれないということはもう明らかだろう」とエルンスト氏は同誌に述べている。

【どうでる今後の方針】
 テレビとパソコンという不採算事業に見切りをつけたソニーは、今後、カメラやゲーム、モバイル機器といった業態に注力して行く方針だという。

 ウォール・ストリート・ジャーナル紙は、明るい材料としてスマートフォンの好調を挙げている。一昨年は3300万台、昨年は3900万台とその売り上げは上昇中で、今年は5000万台を計画しているという。また11月に発売されたPS4も健闘しており、今年は1700万台販売する目標とのことである。

 しかし、フィナンシャル・タイムズ紙はこの方針にも疑問の目を向ける。というのも、この業態はとりわけ競合が激しいからだ。ソニーのスマートフォンは世界売上シェア3.8%で、サムスンやアップルといったライバルに後れをとり、業界7位だ。ちなみにサムスンのシェアは31%だ。

【パナソニックやシャープの復活が一層影を落とす】
 さらにフィナンシャル・タイムズ紙は、独自の強みを開拓して復活の兆しを見せるパナソニックやシャープの好調が、ソニーの不振を一層際立たせていると指摘する。

 同紙によると、パナソニックは、電気自動車メーカーへのバッテリー製造や、エネルギー効率の高い住宅のための技術開発に注力してきた。パソコン事業もまだあるが、一般家庭向けよりも、屋外などで働く人のための頑丈なノートパソコンやタブレットの製造販売に特化し、独自の強みを築きつつある。

 またシャープは、液晶ディスプレイ市場という競合の激しい場で、中国のスマートフォンメーカーを相手に収益性の高いニッチの確保に成功している。つまりは両社とも、一般消費者向けの業態から企業向けの業態にシフトしており、それが功を奏している、と同紙は指摘する。

 アナリストは「パナソニックやシャープにもまだ課題は残る」と指摘しているという。しかしそれでも、少なくともソニーよりはずっと今後に自信をもっていることだろう、と同紙は述べている。

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Text by NewSphere 編集部