トヨタが日産に宣戦布告 “無視できない”中国市場で、各社投資拡大

 2000社以上を集める世界最大の自動車ショー、北京国際自動車展が20日開幕した。一般公開は21日から。展示される自動車は1134、うち118はグローバルデビューとなる新モデルだという。

 ショーでは、トヨタが日産を抜いて日本メーカーの中国販売台数1位を狙うと宣言したり、それに対し日産もかかってこいと言わんばかりであるなど、各社とも中国進出拡大に意気盛んである。

【失地回復を目指す日本メーカー】
 2012年以来の尖閣問題をはじめとする日中摩擦拡大で、20%以上あった中国での日本メーカーのシェアは、16%ほどまで低下してしまっていた。しかし日産のアンディ・パーマーCPLO(チーフプラニングオフィサー)は、「販売への影響という点では、問題は終わっております」と自信を示している。ウォール・ストリート・ジャーナル紙によれば、日本メーカーらは内陸部の比較的裕福でない購買層を惹きつけるため低コストモデルを拡充したり、保証などアフターサービスの強化に手を尽くしてきたという。

 同紙によれば日産は、現在日本メーカー中、中国での売上1位であり、昨年は127万台を販売した。今年は15%増を目標としている。2位はトヨタ(各国全メーカー中だと6位)で、今年の目標は110万台であるが、2017年までに中国に15の新モデルを導入し、将来的に販売数を200万台に増やして日産を抜くと豪語した。それに対し日産のパーマーCPLOは、トヨタはリードを奪いたいなら日産と戦わねばならないと述べ、「日産のような素敵な高速自動車がある以上、私どもはその絶対的な力を手放すつもりはございません」などと語っている。

 ホンダも、前年から19%増となる90万台の販売目標を立てている。また海外メーカーでは独フォルクスワーゲンが1位、他にBMW、アウディ、メルセデスなど含めドイツメーカーが、中国でのシェア19%と優勢である。米ゼネラルモーターズ(GM)は2位、米メーカーのシェアは12%となっている。

【2億4千万の若者】
 中国の昨年の新車販売は2198万台で、前年から13.9%増、世界全体のおよそ4分の1を占めた。今年はさらに10%程度伸びて、2400万台に達すると予想されているという。

 各社は中国での生産強化のため現地工場建設を進めているが、ウォール紙によるとトヨタ、日産、ホンダは、最近まで生産拡大にあまり熱心ではなかった。日産のパーマーCPLOは「私どもは容量オーバーをきたしており、今年これから、何とかしなければならなくなります」と、投資拡大を示唆している。

 パーマーCPLOは、20代後半から30代の若い購買層を重視していると語った。中国にはこの層が2億4千万人おり、世界的に見ても重要だとのことだ。

【口コミ文化には高級車を、大気汚染にはエコカーを】
 またCNBCは、各社が高級車を重視していると伝えた。トヨタは高級コンパクトクロスオーバー(小型SUV)のレクサスNXなどをデビューさせ、米フォードはリンカーン、GMはキャデラックを強化するとのことだ。専門家によると、「中国でのブランド浸透が、自動車メーカーにとってますます重要になってきています。中国の消費者は、モデルやブランドを推薦する友人や家族に頼る傾向があるからです」という。

 ただ、中国では交通渋滞や大気汚染対策として、自動車の環境基準強化や、ナンバーの発行を抽選制・オークション制にするなどの購入制限が進みつつある。中国人民日報傘下のグローバル・タイムズ紙は、全体的な自動車市場の熱気を冷ますほどではないが、各社はこれに対応してハイブリッド車や純粋電気自動車など、エコカーを重視し始めていると報じた。

 今年のショーで展示された「新エネルギー車」は79で、例年よりやや少ないが、大手企業の参入が注目に値するとのことだ。18日には李克強首相も、「成長を維持し、環境を保護する努力の一環として、新エネルギー車の更なる発展の重要性を強調した」という。

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Text by NewSphere 編集部