ユニクロ、英キャス・キッドソンを買収か “日本での低成長の埋め合わせ”と英紙報道

 イギリスのブランド『キャス・キッドソン』が買収される見込みであるとイギリスの各紙が報じている。同社はレトロかつカラフルなデザインの鞄や家庭用品等を販売している。

 売却先企業としては、『ユニクロ』を経営するファーストリテイリングが第一候補であると考えられているようだ。

【成長中のブランド】
 キャス・キッドソンは1993年にロンドンの小さな店からスタートした。現在はイギリスに61、イギリス国外に75の店舗を持ち、イギリス国外での初出店は2006年の東京で、日本には現在33店舗展開している。デザイナーとしてブランドに名を冠する創業者のキッドソン氏は、同社のクリエイティブ・ディレクターとして活躍中だ。

 テレグラフ紙によると、同社の2013年3月末の年間売上高は19%上昇して1億500万ポンド(約179億円)を記録している。EBITDA(利払い前・税引き前・償却前利益)は13%上昇して2100万ポンド(約36億円)となった。

【65%の株式が売却される見込み】
 現在、キャス・キッドソン社の株式の65%をアメリカの未公開株式投資会社TAアソシエイツが所有している。

 デイリー・エクスプレス紙の報道では、同社は複数の海外企業とキャス・キッドソンの売却に関して協議中であるとされる。買い手となる可能性がある企業としては、ファーストリテイリングの他に、フランスの高級ブランドグループ『LVMH』傘下の『L Capital』の名が挙がっている。

 CITY A.M.紙によると、全ての関係企業はこの件についてコメントを拒否している。

 テレグラフ紙によれば、キャス・キッドソンは昨年12月に、スイスの投資銀行UBSに戦略オプションの調査を依頼していた。今回の売却価格は2億5千万ポンド(約426億円)と見込まれる。また、株式の23%はキッドソン氏、残りの12%は経営陣が所有しており、共に保有し続けることとなると予想される。

【イギリスの各紙の見解】
 アメリカ発の『セオリー』、フランス発の『コントワー・デ・コトニエ』等のブランドも所有するファーストリテイリングは、世界中に1300店舗を持つものの、イギリスでの展開はロンドンと南東地域に限定される。同社は11日にベルリンで旗艦店を新規開店したが、その同じ日に、年間収益の予測を下方修正して投資者を失望させた。日本での低成長の埋め合わせとして海外での展開を推進しているというのがテレグラフ紙の見方だ。

 CITY A.M.紙は、今回のキャス・キッドソンと並べて、中国のコングロマリットによる買収を12日に公式発表した百貨店『ハウス・オブ・フレーザー』を挙げ、アジア企業によるイギリスのハイストリートブランド買収が進行中であると見ている。

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Text by NewSphere 編集部