粉飾オリンパス、信託6行が賠償求め提訴 合計856億円、20件以上の訴訟の行方は?

 9日、オリンパスは三菱UFJ信託銀行など国内6行から、合わせて279億円の損害賠償請求を求める訴えを起こされていると発表した。

 訴えを起こしたのは、三菱UFJ信託銀行、日本マスタートラスト信託銀行、日本トラスティ・サービス信託銀行、資産管理サービス信託銀行、野村信託銀行、ステート・ストリート信託銀行の6行である。

 原告である信託銀行各社は、オリンパスが行った粉飾決算による株価の急落によって損失を被ったという。

【提訴の背景】
 ブルームバーグによれば、オリンパスは1990年代から13年間にわたって、有価証券報告書に虚偽を記載し、損失を隠してきたという。

 ロイターが挙げている損失隠しの一例によれば、2008年にオリンパスがイギリスの医療機器メーカーであるジャイラスを買収する際、投資助言会社に対してジャイラス買収額の32%相当が支払われていたという。

 2011年にオリンパスの社長に抜擢されながら、このような不透明な取引を問題視したために半年で解任されたイギリス人マイケル・ウッドフォード氏が行った告発によって、同社の損失隠しは発覚した。

 フィナンシャル・タイムズ紙によれば、2011年、同社の株価は83%下落したという。

 2013年7月、菊川剛前社長ら旧経営者3人は執行猶予付きながら有罪判決を受け、法人としてのオリンパスにも罰金7億円の判決が下ったと各メディアは伝える。

 今回の提訴を含めオリンパスが損失隠し事件に関連して国内外の投資家から提起された損害賠償訴訟は20件近くあり、賠償請求額を合算すると856億円にのぼるとロイターは報じている。オリンパスの広報担当によれば、その中でも本件の賠償請求額は最大だという。

【回復への道のり】
 1919年に、顕微鏡・温度計メーカーとして創業したオリンパスは、有数のカメラメーカーとなり、現在では内視鏡で世界シェアの75%を占めている。

 フィナンシャル・タイムズ紙によれば、同社の株価はこの4月にようやく不祥事発覚前の水準に戻ったところだ。同紙によれば、2012年に就任した笹宏行社長は、ライバルである富士フィルムやHOYAの追撃をかわす一方で、賠償額の支払いによって弱った財務体質改善のための資本提携先を求めてきた。

 昨年これに応じたのがソニーで、500億円を出資、オリンパスの筆頭株主になったのである。

 フィナンシャル・タイムズ紙は「オリンパスが何とか出資を得られたのは、出資者がうまく行くと納得できるような計画を発表したからだ」というアナリストの分析を紹介している。

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Text by NewSphere 編集部