トヨタ印子会社でスト サービス残業、期限死守…日本企業の押し付けを現地メディアは批判

 トヨタ自動車のインド製造・販売子会社トヨタ・キルロスカ・モーター(TKM)のインド人労働者4200人は、ストライキを続けている。インド南部バンガロール郊外にあるTKMの2つのインド工場労働組合によると、賃金、休暇、住宅補助などの待遇改善を求めているという。先週停職となった従業員を復職させることも要求しているようだ。

 トヨタは16日、従業員たちが製品を壊し管理者を脅したとして、彼らを工場から締め出した。そのうち最も破壊的な行動をとったとする30人を停職処分とした。

 これらの工場では、ストライキ前には1日570台を生産し、世界で最大であった。現在は労組組合員以外を動員し300人で操業を開始したが、生産量は1日60~80台ほどに落ちたという(タイムズ・オブ・インディア紙)。

【インド市場での厳しい競争】
 今回の争議は、新興国でビジネスを展開する海外自動車企業に対し、労働者側の要求が高まっているという最近の事例のひとつだ、とウォール・ストリート・ジャーナル紙は報じている。

 このような対立の多くは話し合いによって解決されるが、さらに事態が悪化し暴動へと発展することもある。2年前、スズキは工場に火をつけられ管理者は殺された。

 同紙によると、海外企業は、インド人労働者の賃上げ要求を押さえつける傾向にあるようだ。これらの企業は、失速してきているとはいえ成長著しいインド市場の中で、コスト削減の手綱を緩めようとしない。専門家は、「(インドでは)生活費が増加しているため、労働者たちはより高い給料を要求する」「しかし、インドの自動車市場はここ数年非常に厳しい競争が続いており、経営者は経費削減を維持する必要に迫られている」と分析している。

 トヨタのインドでの売上は現在、同社の売上全体の1.6%に過ぎないという。しかし、海外企業の多くは後5~7年のうちに、インドが中国・アメリカに次ぐ市場になると期待しているようだ。

インド人労働者の代表者は、「良い利益が出た年も、その全てが日本へ送られる」「なぜ経営者は、労働者と利益を分かち合おうとしないのか?」と不満な様子を同紙が伝えている。

【日本式が特殊なのか?インド人に理解力がないのか?】
 印エコノミック・タイムズ紙は、記事の冒頭に、「インドの労働者たちは、枯れた井戸から水を汲み出そうと必死だ、彼らの持つタオルは既に水が滴り落ちているのに」という、スズキの鈴木修・代表取締役会長兼社長の発言を取り上げた。

 この例えは的を射ているだろう、と同紙はしている。とはいえ、日本式の労働規則、期限の死守、無償の残業が当たり前となっていること、などについては、こうした独特な手法にはかなわない、と批判的だ。

 現地従業員との対立についても、日本企業が一方的に自分たちのやり方を押し付けてくることが一因ではとしている。管理者と労働者の間に意思疎通の窓口がないまま、深刻な行き違いが生じるのだと指摘。

 また、日本人幹部は、自分が知らないうちに相手に悪いことをしてしまわないか心配で、現地の従業員とあまり交流を持とうとしない、とも報じている。

 同メディアは、インド側の問題を認めながらも、日本側もインドの国民性を理解し、彼らが本当に何を言いたいのか歩み寄ろうという努力をするべきだ、と主張している。

トヨタとインドとモノづくり―トヨタ流インドビジネスの真髄 (B&Tブックス)

Text by NewSphere 編集部