孫社長、“iPhone販売権”どうやって獲得? キャリア買収前、ジョブズに直談判し ていたと明かす

 ソフトバンク孫正義社長は、米PBSのテレビ番組「チャーリー・ローズ」に出演し、iPhoneの日本独占販売権獲得の経緯を語った。

 孫社長は有能なIT企業家である。学生時代、シャープに自動翻訳機を売り込み、その資金を元手に、アメリカにインベーダーゲームを輸入する会社を設立した。日本に帰国後、ソフトバンクの前身となる会社を設立。彼はYahoo! Japan等への投資で有名な投資家でもある。しかし、iPhoneの販売権を獲得すべくスティーブ・ジョブズに面会した際、携帯電話キャリアの会社さえ持っていなかった。

【「キミはクレイジーだ」】
 アップルがiPhoneの存在を公表する2年前、孫社長自らジョブズに電話をかけ、会いに行ったという。自ら描いたiPodにモバイル機能を備えたスケッチも持っていき、ジョブズに見せた。「マサ、キミのひどいスケッチをくれなくてもいいよ。ボクには自分のがあるから」と断られた、と孫社長は当時を回想している。
 
 孫社長が、日本におけるiPhoneの独占販売権をくれるよう頼むと、ジョブズは答えた。
「キミはクレイジーだ。まだ誰にも話したことないのに、キミが最初に会いにきた。だからキミにあげよう」

 孫社長がその旨を書面にして署名してくれるように頼むと、ジョブズは答えた。「ノーだよ、マサ。署名なんかできない。だってキミはまだ携帯キャリアすら持っていないじゃないか」

 孫社長はジョブズに約束した。「ねえ、スティーブ、アナタが約束を守ってくれるなら、ワタシも日本のキャリアをつれてくるから」

 孫社長は約束を守った。2006年、ソフトバンクはボーダフォンを1兆7,500億円で買収したのだ。2008年、ソフトバンクは、アップルとiPhoneの販売契約を締結したことを発表した。iPhoneは爆発的なヒットとなった。去年の9月にドコモがiPhoneの販売権を獲得するまで、ソフトバンクはドコモのマーケットシェアを侵食するまでに成長した。

【アメリカ市場に価格競争を】
 孫社長の挑戦は続く。去年7月、ソフトバンクはアメリカ携帯市場第3位のスプリントを買収した。第4位のT-モバイル買収も目指している。買収が実現するなら、ソフトバンクは、アメリカにおける2強、ベライゾン・ワイヤレスとAT&Tに対抗する規模を持つことになる。孫社長は、「チャーリー・ローズ」のインタビューに答え、「アメリカ市場に大胆な価格競争を持ち込む」と言明した。

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Text by NewSphere 編集部