ジンガ失敗の二の舞に? 「キャンディクラッシュ」IPOで時価総額76億ドル目指すも、懸念の声

 世界中で人気のスマートフォン向けパズルゲーム「キャンディークラッシュサーガ」を開発した英キング・デジタル・エンターテインメント(キング)が、新規株式公開(IPO)で2220万株を公開し、価格を1株当たり21~24ドルに設定することが12日、明らかになった。

 届け出によると、調達額は5億3300万ドルで、時価総額76億ドルを目指すという。

 証券コードは「KING」で、JPモルガン・チェース、クレディ・スイス・グループ、バンクオブアメリカ・メリルリンチが主幹事を務める。

【大手ゲームメーカーの仲間入りなるか?】
 キング社は2003年創業。ロンドンやストックホルムなどヨーロッパ5都市に開発スタジオを構える。スマートフォンやタブレット向けゲーム急増を背景に、ここ数年で急成長。月間ユーザーは3億2400万人にのぼる。

 同社の時価総額76億ドルという目標は、「アングリーバード」を開発したロヴィオ・エンターテインメントや、音楽ストリーミング配信サービスのスポティファイなど、北欧のIT企業の注目を浴びるとウォール・ストリート・ジャーナル紙は報じた。

 また、「キングダム・オブ・キャメロット」を開発した米カバムなど、新興モバイルゲーム産業において先例となるとみている。

 同紙はまた、この目標は同社が、投資家は時価総額93億ドルのエレクトロニック・アーツや147億ドルのアクティビジョン・ブリザードなど大手ゲームメーカーと同様に見るべきとの考えを示すと報じた。

【時価総額76億ドルは妥当か?】
 一方ニューヨーカー誌は、時価総額76億ドルは過大評価だと論じた。同社の売り上げの80%を占める「キャンディークラッシュサーガ」が、今後数年にわたり収益を上げ続ける保障はないと指摘した。

「ゲーム業界は1つのゲームで大成功する会社が多いが、その成功を繰り返すことはできない」という、ストラテジー・アナリスティクスのゲーム専門家エド・バートン氏の見解をフィナンシャル・タイムズ紙は掲載した。

【投資家は米ジンガの例と比較】
 その最も顕著な例が、2011年の上場以降6億ドルの損失を出した、時価総額50億ドルのゲーム開発大手ジンガだ。フェイスブックのソーシャルゲーム「ファームビル」の成功をモバイルに転換できず、業績が悪化している。

 ニューヨーカー誌は、ジンガを評価している市場がキングを「掘り出し物」として飛びつくことは間違いないが、これは単なる賭けだと指摘。公開は、今後数年にわたり銀行に十分過ぎる資金を持つ同社にとって失敗に見えると断じた。

【鈍化の兆しも】
 フィナンシャル・タイムズ紙は同社の成長が鈍化している兆しも指摘した。

「キャンディークラッシュサーガ」は、1日のアクティブユーザー数が12月の9300万人から2月は9700万人に上昇している。ただ、1日の平均プレイ回数は10億8500万回から10億6500万回へと若干減少しているという。

 近年成功した多くのモバイルゲーム開発会社同様、キングは基本サービス無料で特別な機能に料金を課金する「フリーミアム」モデルを採用している。ただ、購入するユーザーはたった4%であり、月1回以上購入するユーザーも減少傾向にあるという。

「起業」の歩き方: リアルストーリーでわかる創業から上場までの50のポイント [amazon]

Text by NewSphere 編集部