LINE 対 中国のWechat 欧州争奪戦の行方は?

 ガーディアン紙は、ユーザー数2億3000万人を突破した、無料電話・メールアプリ「LINE」が、フェイスブックの3倍もの急速な成長を実現させ、頂点に君臨するスカイプをも追い落とそうとしている、と報じた。オリジナル・キャラクター、クマのブラウンとウサギのコニーは、そのユニークな「カワイさ」で、ヨーロッパの消費者の心をつかもうとしていると紹介した。

【LINEの快進撃】
 LINEは、2011年のサービス開始以来、最大の「売り」である「スタンプ」を武器に、たちまちユーザーの心を虜にした。顔文字や絵文字の代わりにメッセージに貼り付ける、さまざまな表情やしぐさを見せるマンガ風のキャラクターは、サービス発信地の日本はもとより、アジア全域で大好評を博した。

 サービス開始以来、わずか1年間で5000万人のユーザーを獲得した。フェイスブックがユーザーを5800万人にまで伸ばすのに3年間を要したことを思うと、驚異の成長ぶりがよくわかる。

 LINEは欧州圏でも攻勢を強めている。男子テニスで世界2位のナダル選手や、スペインの名門サッカークラブチーム・レアルマドリードやFCバルセロナを「公式アカウント」に加え、ファンを中心に、ユーザーの拡大を目指す戦略を展開している。

 全米オープン中、ナダル選手は勝利するたびに、LINEを通じ、ファンへの感謝や勝利の喜びを書き込んだ。9日のシングルスで優勝すると、「友達」に同選手の記念スタンプを贈った。

 こうした施策が効を奏してか、スペインのLINEユーザー数は1000万人を越えている(2013年4月時点)。

【独走許さじ? 猛追撃の中国発アプリ】
 世界を席巻するかのような日本発アプリ、LINEの快進撃。しかし、独走態勢とはいかないようだ。

 マレーシア・インサイダーでは、世界市場に打って出ている中国発のサービスを、LINEと並ぶ「アジア発、コミュニケーションアプリの双璧」として採りあげた。

 それは、中国インターネット通信大手Tencentが提供する、WeChat(中国名、「微信」)。登録者数は現在5億人(海外1億人)を突破し 、LINEと同じく、ヨーロッパでのシェア拡大を目指している。FCバルセロナ所属のメッシ選手を広告塔に起用し、欧州ファンの取り込みを図っているという。

 無料通話、動画配信、独自のスタンプと、共通点のサービスが多い両社。だが同紙は、WeChatには、LINEにはまねのできない強みがあると指摘している。それは、世界各国に散らばる中国系市民の存在だ。BNPパリバのアジア・コンサルティング部の中国系の責任者は、そうした市民を「中国と世界の架け橋」と形容する。

 中国市場の開拓を狙う多数のブランドも、WeChatの抱える莫大な中国人ユーザーに熱い視線を送っている模様だ。たとえば、WeChatのジオロケーション機能を使うと、欧州を訪問中の中国人ユーザーの位置を特定することができる。こうしたユーザーに広告を送り、ショップに誘導することも可能というわけだ。

 日本発の「カワイイ」文化を前面に押し出すLINEと、莫大な潜在的顧客層が魅力の中国発のWeChat。熱い戦いから目を離せない。

Text by NewSphere 編集部