「世界最強」の日本のパスポートは「最高」ではない 各ランキングを考察

Sergey Shik / Shutterstock.com

 英コンサルタント会社のヘンリー&パートナーズがリリースする最新のパスポートランキングにおいて、日本のパスポートがシンガポールと並んで「世界一」となった。このランキングで日本のパスポートが世界一になったのは初めてのことではないが、別の要素を加味したランキングでは日本は必ずしも1位という訳ではない。その違いとは。

◆「事前ビザ申請不要国」が最多
 ヘンリー&パートナーズ(Henley & Partners)は、外国における住民権や市民権の獲得支援を専門とするアドバイザリー会社。本社はイギリスだが、欧米、アジア、アフリカなど世界各地に35以上の事務所がある。同社のウェブサイトには「グローバル市民の会社(The Firm of Global Citizens)」とのタグラインが掲げられている。

 同社が四半期ごとに更新しているのがヘンリー・パスポート・インデックス(Henley Passport Index)と呼ばれるパスポート(全199ヶ国)のランキングだ。ランキングは独自のものだが国際航空運送協会(International Air Transport Association:IATA)から独占的に入手したデータをもとにしており、世界の227の国と地域へ事前のビザ申請なし(ビザなし)で入国できるか否かをインデックス化してランキングにしている。

 今年のランキングの結果を見ると、日本とシンガポールのパスポートが最強で、193ヶ国にビザなしで入国できるのに対し、アフガニスタンが最下位で事前ビザ申請不要国は27ヶ国に限られている。ビザなしの定義は、事前にビザ申請が必要かどうかというもので、オンアライバルビザで入国できる国や、アメリカのESTA(エスタ)などの事前申請で入国できる国は「ビザなし」としてカウントされている。一方、オンラインでビザが取得できる国(電子ビザが導入されているケニアなど)はビザが必要な国としてカウントされている。

 ヘンリー&パートナーズのサイトでは、自分の国のパスポートでどの国にビザなしでアクセスできるか(もしくはビザが必要か)を確認したり、複数のパスポートの「強さ」を比較したりできる。日本と、ランキング2位の韓国、ランキング64位の中国、ランキング7位のアメリカを比べると、強いパスポートで入国できる国は被っているが、それぞれの2国間の外交関係が異なるため必ずしも同一ではない。たとえば、アジア3国はアゼルバイジャンにビザなしで入国できるがアメリカはビザが必要だったり、アフリカのギニアにビザなしで入国できるのは中国のみだったり、韓国だけがビザなしでロシアに入国できたりと、さまざまな外交関係を垣間見ることができる。

Text by MAKI NAKATA