子供の肥満に薬物治療、手術を推奨 米国小児科学会、新ガイドライン公開

肥満症治療薬として米で承認されたWegovy|Novo Nordisk via AP

 アメリカで未成年者の肥満人口は約1500万人に達した。約20%が肥満という高い割合だ。ダイエットや運動でも解決しない深刻な問題にしびれを切らした小児科学会が、初めて治療法についてある提言を打ち出した。その驚くべき提言とは?

◆12歳以上の治療に 肥満治療薬や減量手術も
 アメリカで肥満に苦しむ子供に対し、早期の段階で診断を下し、治療薬や手術といった治療法を積極的に実施することを推奨する臨床治療ガイドラインが9日、公表された。米国小児科学会(AAP)が早期集中治療の必要性を訴えるため、小児科医および医療従事者向けに初めて指針を作成した。

 米疾病対策センター(CDC)によると、子供の肥満率は過去15年間で17%から20%に上昇し、思春期を含む子供の肥満人口は約1500万人に達した。1980年以降、その割合は3倍に膨れ上がっている。肥満は、2型糖尿病や高血圧といった健康被害だけでなく、精神面への影響にもつながっている。

 長らく経過観察や治療の延期という治療法が取られてきた。しかし、ガイドラインによると、この治療法が効果的だというエビデンスはない。そのため、問題を悪化させ、未成年者1440万人以上の肥満者を生んだ。治療を放置した場合、肥満は高血圧症や糖尿病、うつ病といった生涯にわたる健康リスクを引き起こす可能性がある。

 ガイドラインの作成に従事した共同著者のイオマ・エナリ医学博士は、「経過診察はよくありません。継続的な体重増につながり、成人してからも肥満になる可能性があります」と説明する(AP 1/10)。同指針は初めて、思春期を含む子供に対し、ダイエットや運動、行動・生活習慣への介入のほかに、治療薬や手術を治療法として推奨した。

 肥満のある6歳以上、場合によっては2歳から5歳までに対する最初のアプローチとして、小児科医と医療従事者は行動習慣を変化させる取り組みを行うべきとしている。推奨事項として大きく変わった点は、肥満のある12歳以上に対して肥満薬と減量手術が推奨されたことだ。医師は、状況によって異なるが、一般的に肥満のある12歳以上に適切な治療薬を処方、高度肥満の13歳以上に減量手術を紹介する必要があるとガイドラインは示している。

 同ガイドラインの共同著者であるサンドラ・ハシンク医学博士は、「ガイドラインの目的は、勤勉性の欠如といった性格の問題として捉えられている肥満に対する考え方を180度転換することにあります。肥満はぜんそくを患うのと同じことであり、私たちにはそれを治す治療法があるのです」と言う(AP)。

Text by 中沢弘子