「中絶反対」の共和党候補、恋人に中絶させた? “10月サプライズ”で米中間選挙に波紋

ハーシェル・ウォーカー氏|Miguel Martinez / Atlanta Journal-Constitution via AP

 アメリカでは11月の中間選挙まで1ヶ月を切り、候補者たちがラストスパートの選挙キャンペーンに精を出している。今回の選挙で最も注目を集めているのは2020年と同じくジョージア州の連邦上院選だろう。現在上院では民主党と共和党が50議席の同数で、採決で同数となった場合はカマラ・ハリス副大統領が票を投じられるため民主党が多数派を保っている状態だ。

 民主党は議席数を52以上にするため、ウィスコンシン州やノースカロライナ州、オハイオ州の議席を狙っている。一方共和党は、2020年の特別選挙で民主党に奪われたジョージア州の議席を取り戻すことに狙いを定めているが、共和党予備選に勝利したのは、トランプ前大統領の支持を得た同氏の個人的友人の元プロアメリカンフットボール選手のハーシェル・ウォーカー氏だった。

◆パートナーに中絶させた中絶禁止主張者
 アフリカ系のウォーカー氏はアメリカンフットボール選手として活躍した経緯で名前は売れているが、前妻と子供への深刻なDV(家庭内暴力)容疑や隠し子騒動も取り沙汰されている人物である。しかも「ジョージア大学を首席で卒業した」「連邦捜査局(FBI)で働いた経験がある」などの虚偽の発言を繰り返して学歴・職歴詐称をしており、政治家には不適格ではないかと疑われる人物である。

 そのようなウォーカー氏だが、ジョージア州は深南部の保守州だ。共和党支持者に根強い人気を誇るトランプ氏から支持を受け、ウォーカー氏がレイプや近親相姦の場合を含む人工妊娠中絶の全面的禁止を主張して共和党支持者に人気なことから、ジョージア州連邦上院選の世論調査ではこれまで同氏と民主党現職のラファエル・ウォーノック氏の支持率は拮抗していた。しかし10月に入り、スクープ報道も多い情報サイト『デイリービースト』にウォーカー氏のスキャンダルが掲載され、大きな波紋を投げかける結果となった。

Text by 川島 実佳