ウクライナ、穀物2000万トン滞留のなか収穫期に 輸出できず、貯蔵施設もなく

小麦の実り具合を確認する農家の男性(ドネツク州、6月21日)|Efrem Lukatsky / AP Photo

 ロシアの妨害で通常の輸出ルートが使えないため、ウクライナからの穀物輸出が滞っている。あと数週間で今年の収穫期を迎えるが、倉庫には昨年の収穫物がまだ残っており、このままでは新たな収穫分を蓄える場所にも困ることになる。代替ルートが検討されているが、時間やコストなどが障害になっている。

◆ロシアが黒海ルートを封鎖 輸出を阻む地雷
 ウクライナは世界の小麦の輸出の10%、トウモロコシの14%、ヒマワリ油の約半分を担う農業国だ。そのほとんどがオデーサ(オデッサ)など黒海の港から輸出されてきたが、ロシアの侵攻によりこのルートでの輸出ができなくなっている。

 オデーサは現在もウクライナの管理下にあるが、ウクライナ沖の海域はロシア艦隊によってほぼコントロールされている。これによりウクライナの海路は断たれてしまった。加えてウクライナ側は、ロシアの上陸を阻むため港を閉鎖しオデーサの海岸線に地雷を仕掛けている。海にも機雷が仕掛けられているが、これらは2014年にロシアがウクライナから奪ったもので、国際社会でのウクライナの名誉を傷つけるため意図的にロシアが敷設したものだとウクライナは主張している。(ウェブ誌Vox

◆貯蔵スペースがわずか 収穫期に間に合わない
 ウクライナではもうすぐ穀物の収穫期を迎えるが、行き場を失った2000万トンの穀物が倉庫やサイロに残ったままだという。ウクライナ政府は、今年の収穫分1000万~1500万トンを収めるための新たなスペースが必要になると予測している(ウォール・ストリート・ジャーナル紙、以下WSJ)。保管場所が確保できなければ、腐って無駄になるか、ロシアに攻撃され略奪される可能性もある。

 ウクライナに対し、EUが保管場所の提供を、アメリカがポーランドとの国境付近にサイロ建設を申し出ているという。国連もロシアと交渉し黒海ルートを解放するよう求めているが、次の数ヶ月の穀物保管場所を確保するという生産者の喫緊の課題に対して解決にはなっていない。(WSJ)

Text by 山川 真智子