「民主主義はもろい」NZ首相が米大学で警鐘 米国、世界へのメッセージとは

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 ニュージランドのジャシンダ・アーダーン(Jacinda Ardern)首相は、5月末に行われたハーバード大学の卒業式で演説。民主主義の脆弱性を改めて気づかせるとともに、いま米国世論をさらに分断する銃規制強化や中絶違法化などの議題についても触れた。その詳細とは。

◆ハーバード大卒業式のスピーチ
 夏休み前にアカデミック・イヤーが終了する米国では5月は卒業式シーズン。米国の総合大学では卒業式週間(Commencement Week)の期間中、いくつかのイベントが開催される。ハーバード大学の今年の卒業式週間は5月24日に開始。卒業式週間のハイライトである朝の式典(Morning Exercises)は26日の木曜日に執り行われた。この式典は、大学中心部にあるアイコニックな中庭、ハーバード・ヤード(Harvard Yard)で開催。371回目である今年の式典のゲストスピーカーとして登壇したのがアーダーン首相だ。

 ハーバード大学の卒業式スピーチには、大学の卒業生かどうかを問わず、さまざまな著名人が招かれる。そして世界的な有名人が登壇する折には、世界のメディアがとくに注目する。歴代のスピーカーには、ドイツのアンゲラ・メルケル(当時の現職首相)、米公民権運動を率いたジョン・ルイスといった影響力のある政界のリーダー、マーク・ザッカーバーグやビル・ゲイツといったビジネス界のリーダー、そしてオプラ・ウィンフリーやJ.K.ローリングなどのクリエイティブ業界のリーダーが名を連ねる。

 新型コロナウィルスのパンデミックで、卒業式イベントのオンライン開催という措置が取られていたため、アーダーン首相は、2019年以降ハーバード・ヤードにおける式典で演説した初めてのスピーカーとなった。彼女は、ホビトン(ロード・オブ・リングなどのホビット村)に隣接するモリンスビル(Morrinsville)という小さな村出身の政治家である自分は、アカデミアの人間ではなく、式典のガウンにも不相応だと言いつつ謙遜の姿勢を見せた。国の首相でありながら聴衆に親近感を感じさせるようなアーダーンならではスタイルだ。

 アーダーンは、式典ガウンの上にニュージランドのマオリ族伝統の羽のマントを羽織って登壇し、先住民族への敬意を表明した。また、スピーチは英語ではなくマオリ民族が使用するモコという言語で開始された。

Text by MAKI NAKATA