ロシア工作員と接点も ロシアのウクライナ侵攻を擁護する元米下院議員

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 アメリカでは2016年の大統領選と2017年のドナルド・トランプ前大統領就任以降、  ロシアからの政治的影響が増大した。それはもちろん、トランプ氏自身が出馬中から親ロシア・プ―チン路線を取り続けてきたからであり、トランプ氏や共和党が、何らかの秘密をロシア政府に握られているのではないかという疑惑はいまも根強く残っている。

 2016年当時のCNNの報道によると、ロシアのハッカーは大統領選の最中、民主党と共和党両方の情報システムをハッキングしたと思われている。その後、大統領選の民主党候補だったヒラリー・クリントン元国務長官の電子メールがウィキリークスのジュリアン・アサンジ容疑者により漏洩されたことは記憶に新しい。しかし前出のCNNの報道によると、民主党と同じくハッキングされたはずの共和党の情報は公開されていないことから、共和党がロシアに何らかの秘密を握られたのではないか、という説が囁かれるのも無理はないだろう。もしそれが事実ならば、その後ロシアを擁護する共和党員が増えたのも自然な流れに思える。

◆ウクライナ侵攻でロシアを擁護する元議員
 しかし、2月24日にロシアがウクライナに対する軍事侵攻を開始した後、共和党によるロシア擁護の流れが変わった。CBSニュースによると、ミッチ・マコネル上院院内総務は「大多数の共和党員がウクライナを支持しており、(バイデン)大統領に支援のステップをより迅速に、大胆に行うことを求めている」と述べた。もちろんいまだにプーチン擁護の発言を繰り返し、ウクライナに圧力をかけたことで弾劾された経験を持つトランプ氏は含まれないが、このように民主・共和両党が一つの問題で同意するのは珍しいことだ。

 そのようななかで一人異彩を放っているのがトゥルシー・ギャバード元下院議員(民主、ハワイ州)である。彼女の父親は共和党から鞍替えして民主党員になったハワイでは名の知れた地元議員だ。トゥルシー・ギャバード氏は2012年に民主党から出馬し、下院選挙に当選したが、2020年の大統領選の民主党予備選に出馬した頃から奇妙な言動が目立つようになってきた。とくにヒラリー・クリントン氏とのトラブルは大きく報道されたが、NBCニュースによると、クリントン氏が2019年10月にギャバード氏について「(ロシアは)民主党の予備選に出馬している誰かに目をつけ、第3党からの候補者として育成しようとしている。彼女はロシアのお気に入りだ」と述べたことから、翌2020年1月にその発言をめぐり5000万ドルの損害賠償を求めてクリントン氏を提訴したという経緯がある。

Text by 川島 実佳