国連「ウクライナでも女性が最も被害を受けている」

Ukrainian State Emergency Service via AP

 国連女性機関(UN Women)のシマ・バホス事務局長によると、ミャンマーやアフガニスタンからサヘル、ハイチにいたるまで、ありとあらゆる危機や紛争において女性・少女が最も大きな被害を被っている。その上で「ウクライナで起こっている恐ろしい戦争もまた、そのひとつに数えられる」と指摘している。

 バホス氏は3月14日、国連女性の地位委員会年次会合のオープニングセッションで「戦争が日々、ウクライナの女性・少女たちの生命を奪い、希望と未来を打ち砕いている。小麦と石油を生産する二国間で戦争が起きているという事実により、世界各地で食料安全保障と必要不可欠なサービスへのアクセスが脅かされており、ここでも女性・少女に最も深刻な被害が及ぶだろう。私は彼女たちと、戦争に巻き込まれているすべての人たちに、早く平和が訪れるよう祈っている」と述べている。ウクライナの戦闘で殺害されたり、負傷したりしている男性については言及していない。

 今年、2週間にわたり開催される会合の最優先テーマとなったのは、気候変動への取り組みにおける女性のエンパワーメントである。女性の地位委員会が対面式での会合を開催するのは、新型コロナウイルスのパンデミックが発生して以降、3年ぶりのことだ。

 バホス氏は「すべての危機がそうであるように、気候変動もまた、女性・少女に最も大きな負担を強いている」と指摘している。すでに不利な状況にある人たち、母子家庭、農村部の女性、干ばつ時に水を確保しに遠くまで歩かねばならず学校に行けない若い少女、土地へのアクセスを許されていない女性、高齢女性、資金調達手段を持たない女性らにはとくにこれに当てはまるとしている。

 アントニオ・グテーレス国連事務総長は「世界はまだ男性優位のままで、何千年も続いた家父長制度が女性を排除し、彼女たちの声を届かなくした結果だ」と述べている。

 気候危機、汚染問題、砂漠化、生物多様性の損失に、新型コロナウイルスのパンデミックも重なるなか、ウクライナの戦争をはじめとする紛争の影響は全員に及んでいる。その上で、グテーレス氏は「女性・少女は最も大きな脅威にさらされ、最も深い痛手を負う。ある地域の食料や水を含む天然資源が脅かされた場合、最も苦しむのは女性で、彼女らがそれに適応する術は多くない。環境危機や、干ばつ、洪水といった極端な気象が起こると、女性農家の栄養状態、収入、暮らしに偏って大きな被害が及ぶ」と指摘している。

 同氏によると、児童婚や児童労働の搾取と、気候危機に関連性があるとするエビデンスが次々と見つかっている。そして現在頻度を増している気候災害が発生した場合に、「女性と子供が死亡する可能性は男性の14倍高いとする研究結果がある」としている。

 女性差別撤廃条約委員会のグラディス・アコスタ・ヴァルガス議長は「ウクライナの戦争により、愛する人たちを故国に残して行くしかなかった多数の難民女性および児童など、市民にも被害が及んでいる」とした上で、対立の終結と、女性の平等な参画を叶える和平の実現を求めている。

 女性差別撤廃条約委員会は、女子に対するあらゆる形態の差別の撤廃に関する条約の実施状況を監視する。同条約には189ヶ国が批准している。45人の委員で構成される女性の地位委員会は、男女平等と女性のエンパワーメントを推進する国連の組織で、国連女性機関の運営組織のひとつである。

 ヴァルガス氏は「残念なことにパンデミックが、気候変動と女性・少女に対するジェンダーに基づく暴力から世界の注目を奪ってしまった。それでも、世界の各地ではハリケーンや洪水、森林火災が、女性・少女を存在の危機にさらし続けている」と話す。

 同氏は、水を確保するため長距離を移動する必要があり、性的暴行を受けるリスクが高まっている女性・少女がいることを例に挙げ、天然資源の劣化や破壊が、ジェンダーに基づく暴力を増幅させると指摘している。また、女性差別撤廃条約委員会としては、環境や土地、領土に関する権利を守り抜こうとしている先住民の女性たちに対する攻撃、脅迫、ハラスメント、殺害事件が増加していることに懸念を抱いていることを明らかにした。

 アブドゥラ・シャーヒド国連総会議長は同委員会に対し、差別とジェンダーについてのステレオタイプ化に対する取り組みを行うよう求めている。

 シャーヒド氏は「若い女性気候活動家らが、世界的な環境保護運動を扇動することに一役買ってきた。2015年のパリ気候協定も、女性リーダーらが陣頭指揮をとった。発展途上国の女性たちは、サステナブルな活動を取り入れることで、コミュニティを変えている」と話す。

 同氏は累進課税制度のほか、差別と不平等を是正しながら、女性の経済的な権利と公共サービスへのアクセスを向上するジェンダー予算を求めている。

 シャーヒド氏はまた、76年におよぶ国連の歴史のなかでも、国連総会の議長として一年間の任期を務めた女性が4人しかいないことや、女性の事務局長は1人もいないことを指摘した上で、気候行動などについての意思決定において、女性の代表者を増やすよう主張している。

 同氏は「個人的には、次期事務局長に女性を採用するよう先頭に立って求めていきたい。この明快な呼びかけに、ぜひ賛同してください」と訴える。

By EDITH M. LEDERER Associated Press
Translated by t.sato via Conyac

Text by AP