ウクライナ情勢:米国バイデン政権の限界が顕著に 加速するGゼロ

Alex Brandon / AP Photo

 ロシアのプーチン大統領は21日、ウクライナ東部ルガンスク州とドネツク両州の一部を実効支配する親露派武装集団が一方的に独立を宣言していた二つの人民共和国を、独立国家として承認する大統領令に署名した。これによって西洋諸国が一斉にロシアに対して追加経済制裁を発表するなど、ウクライナ情勢をめぐる緊張がまたワンフェーズ高まった。だが、筆者の考えでは米国ができることには限界があり、今後もロシアの行動を抑制することはできないだろう。

◆多正面作戦を回避したかったバイデン政権
 バイデン政権は発足間もない昨年3月、発表した国家安全保障戦略の中で中国を唯一の競争相手に位置づけた。中国に対しては同盟国や友好国と共に協力しながら対抗していく姿勢を強調し、ロシアにも懸念はあったものの、対抗相手として中国とロシアには大きな差があったはずだ。対ロ関係は難しいが、対中国でロシアと少なからず協力するという選択肢もあったかもしれない。バイデン政権は中国を唯一の競争相手と位置づけることで、対中国に集中したかったはずだ。しかし、そのバイデン政権の思惑を巧みに利用するかのように、ロシアのプーチン政権は思い切った行動に出た。すでに米ロ関係が急速に冷え込み、バイデン政権は多正面作戦を回避したかったが、その思惑は確実に裏目に出たと言えよう。

Text by 和田大樹