アフリカのテックベンチャーが抱えるエコシステムの課題と「戦略的ジレンマ」

AfricArena

 11月、南アフリカ・ケープタウンにて、アフリカ最大級のテックベンチャー・エコシステム構築団体アフリカリーナ(AfricArena)が開催するサミットが行われた。エコシステム構築において、とくに議論の焦点の一つとなったのが、アフリカにおけるローカルのエコシステム構築と、グローバルのベンチャー企業の枠組みとのアラインメントの課題だ。その概要とは。

◆エコシステム構築に向けて
 アフリカリーナは、2017年に開始したプラットフォームで、南アフリカを拠点にアフリカ全土におけるテック・ベンチャー・エコシステム構築に向けたさまざまな取り組みを行っている団体。創業者、エンジェル投資家、企業、ベンチャー・キャピタリスト(VC)といったエコシステムにおける主要なプレイヤー同士をより効率的・効果的に結びつけ、スタートアップに対する投資機会と市場アクセスの機会を提供することを目指す。仕掛人は、過去20年間、ケープタウンを拠点にさまざまな企業の創業者・起業家として活躍してきたクリストフ・ヴィアルノー(Christophe Viarnaud)。彼はケープタウンを拠点にフランス、英国、ベネルクス、チュニジア、南アフリカにおいて、さまざまなDXソリューションを提供するIT企業、メティス・グループ(Methys Group)の共同創業者兼CEO兼会長を務めるかたわら、アフリカリーナをはじめとする複数団体の経営に関与し、アフリカのテックベンチャー・エコシステムの構築にコミットしている。

 今年で5年目を迎えるアフリカリーナは、団体自体もスタートアップとしてその事業環境に適応しながら変化しているが、開始当初から継続しているのが南アフリカ・ケープタウンで開催されるサミット。昨年はパンデミックの影響を受けて、小規模のオフラインおよびオンラインのハイブリッド開催、今年はセミ・オープンエアの会場におけるオフライン会議が中心となったが、会議の模様は専用アプリおよびユーチューブ・チャネルを通じてビデオ配信された。サミットは11月16日と17日にかけて開催。会議アジェンダの主な構成要素は基調講演、ディスカッション、そしてスタートアップ企業によるピッチ・セッション。参加したスタートアップ企業は、メイン・サミット前に開催されたアフリカ各地の地域イベントのピッチ・セッションを勝ち抜いた37の企業だ。今年は、5月に南アフリカ・ヨハネスブルグにて南部アフリカ・サミット、6月にセネガル・ダカールにて西アフリカ・サミット、10月上旬にはケニア・ナイロビにて東アフリカ・サミット、10月中旬にはチュニジア・チュニスにて北アフリカ・サミットが開催。これらの地域サミットは、メイン・サミットと同様の形式を保ちつつ、地域・国のエコシステムに適合したイベントとなっている。

 また、メイン・サミットの直前には、主にVC向けの招待制オフサイト・イベントであるVCアンカンファレンス、メイン・サミットのピッチ大会に参加するスタートアップ企業のためのファウンダーズ・ブートキャンプ(Founders’ Bootcamp)が開催。エコシステムの主要なプレーヤーである、投資家と起業家のそれぞれに対して、より包括的な支援を行う枠組みが構築されている。さらに、サミット直前および初日の夜には、それぞれネットワーキング・イベントが組み込まれ、エコシステムの参加者らが、より有機的な形で関係性を構築するような機会が設けられている。こうしたネットワーキング・イベントおよびサミットそのものは、起業家にとって普段アクセスが限られているグローバルな投資家や、パートナーとなりうる企業関係者らと有益な繋がりをつくる貴重な場である。

Text by MAKI NAKATA