「4倍成長の潜在力」アフリカ映画産業についてユネスコが報告書 4つの成長モデルを提案

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 10月、ユネスコ(国際連合教育科学文化機関)は、アフリカの映画およびオーディオビジュアル産業に関する、各国概況を示した初の報告書を発刊。報告書によると、産業のポテンシャルは高く、現状の4倍である2000万の雇用を生み出す可能性がある。主な調査結果とは。

◆アフリカ映画産業概況
 今回発刊された271ページの報告書は3部構成になっており、第1部はアフリカの映画およびオーディオビジュアル産業の未来を形成するアフリカ全体のトレンド、第2部は戦略的発展と成長のモデル、第3部は54ヶ国それぞれの業界概況という内容だ。アフリカの映画産業といえば、年間約2500本の映画を製作しているナイジェリアのノリウッドが比較的知られている。また、南アフリカやケニア発のいくつかの映画も国際的に注目されつつある。本報告書は、アフリカの映画産業の概況を俯瞰しつつも、産業の規模を問わず、アフリカ54ヶ国すべての国における状況をカバーしているという点で画期的である。

 全体としてアフリカの映画業界は歴史的かつ構造的に資金不足、開発不足、過小評価されているという状況にあり、関連団体の試算によると、その市場規模は現在の50億ドルに対して、4倍の200億ドル相当のポテンシャルがあるとのことだ。また、アフリカ全体において、業界の多くの側面が、非公式(インフォーマル)なかたちで展開されている。撮影の誘致などを行う団体であるフィルム・コミッションが存在する国は全体の44%にとどまる。また、映画に関する政策が存在する国は55%。関連政策が存在していたとしても、それらは必ずしも産業発展を促進するものではなく、場合によっては阻害するものとして見られている。ローカルの産業発展を阻害する要素としては、海賊版の存在も深刻である。3分の2の国において、海賊版の存在が収益半減をもたらしている。表現の自由に関しても、87%がなんらかの制限が存在していると回答している。

 一方、ポジティブな要素としては、西アフリカにおけるフランスからの投資額の増加、ナイジェリアにおける映画館の増加、ブロードキャストのデジタル化といった要素が記載されている。また、ネットフリックス、ユーチューブ、そのほかのさまざまなデジタル技術が業界のゲームチェンジャーとなりうる可能性を秘めている。

Text by MAKI NAKATA