続くテロ事件 依然消え去っていないイスラム国の動き

IS戦闘員の妻子らが収容されているアルホル難民キャンプ|Baderkhan Ahmad / AP Photo

 近年、日本のメディアでイスラム国について報道されることはほとんどなくなった。イスラム国は2014年6月、当時のバグダディ指導者がイラク北部モスルで一方的な建国宣言をし、それ以降イラクやシリアでテロや残虐行為を繰り返し、その画像や動画をSNS上に繰り返し発信したことで、国際メディアからも頻繁に取り上げられる存在となった。

 それから7年経ち、バグダディ容疑者は2019年10月に殺害され、イスラム国の支配地域はイラクやシリアでなくなり、以前とはまったく違った姿だ。それによって日本メディアで取り上げられる回数は圧倒的に減り、人々の注意や関心も薄まっている。しかし、その動向を引き続き注視していると、決して楽観視できない情勢であることがわかる。

◆依然として活動するイスラム国
 実は、世界中のテロ専門家らの研究や分析を日々追っていくと、イスラム国に関するアップデートな情報が常に入ってくる。たとえば、米国のシンクタンク「The Washington Institute」の中東専門家Aaron Y. Zelinがまとめた最新の統計によると、イスラム国がイラクとシリアで犯行声明を出したテロ事件は先月の5月に125件を記録した。それ以前は、1月80件、2月64件、3月69件、4月120件だった。発生地域を見ると、イラクでは首都バグダッド北部からティクリート、キルクーク周辺で多く、シリアではイラク国境からのユーフラテス川沿いが多い。4月以降再び増加している背景については示されていないが(ラマダンの影響か)、Aaron Y. Zelinがまとめた統計からは、依然としてイスラム国が活動を継続していることがうかがえる。ちなみに、昨年9月は99件、10月は101件、11月は85件、12月は75件などを記録しており、発生地域に大きな変化はみられない。

Text by 和田大樹