急成長する南アフリカのeコマース パンデミック後も成長の見込み
パンデミックとロックダウンの影響で、さまざまな分野でのデジタル化・オンライン化が加速するなか、南アフリカにおけるイーコマース(EC)市場も急成長している。2020年、EC市場は66%成長した。パンデミックで、各小売店が積極的にECインフラ整備を進めたのと同時に、消費者側のECに対するハードルも低下したようだ。先日発行された南アEC市場に関する調査報告書で明らかになった、その最新動向とは。
◆南アフリカ、EC市場の概要
テクノロジーに関する市場調査や戦略企画支援を行う南アフリカの団体、World Wide Worx(以下、WWW)が、マスターカード、スタンダード・バンク、プラチナム・シードの協力のもと作成した調査報告書『2021年版、南アフリカのイーコマース(Online Retail in South Africa 2021)』によると、2020年の南アフリカのEC市場は前年比で66%成長し、300億ランド(約2300億円)の市場規模を記録した。小売業界全体におけるEC割合は2.8%と、いまだに低めではあるが、2018年と比較すると割合は2倍に増えた。南アフリカでは実店舗の小売業も成長を続けているが、過去20年間、EC市場は実店舗を上回る速度で成長を続けており、ECの割合は今後さらに増加することが見込まれる。
報告書のリリースに伴い、ウェビナーが開催され、鍵となるインサイトが共有された。WWWの代表で、報告書の執筆を手がけたアーサー・ゴールドスタック(Arthur Goldstuck)によると、2020年の重要な点の一つが、年齢層にかかわらず、EC利用率が大幅に増加したことだという。報告で使われた、TGI消費者アンケート(回答者1.6万人)をもとにしたデータによると、2018年時点でのECは、その率が一番高かった25-34歳の年齢層の間でもたったの3.75%と低い数字だった。しかし、2020年はすべての年齢層において、その利用率が大きく増え、65歳未満の各年齢層ではいずれも約3割がECを利用し、65歳以上の層も約2割が利用しているという結果が明らかになった。さらに、インターネットでの買い物体験がより快適であると回答した人は、65歳以上では46%で、65歳未満各層の約3割という結果に比べて最も高い数字となった。インターネットにおけるショッピングが、65歳以上の年齢層にとって、デジタル化された「新しい買物体験」として、より評価されたということが推測できる。
EC利用率は、年齢層別では大きな違いは見られなかったが、所得レベルと教育レベルではその利用率に差がみられた。その収入が高ければ高いほど、EC利用率が高くなる傾向にあり、ほぼ比例関係にある。また、教育レベルにおいても、教育レベルが高ければ高いほど、EC利用率が高くなる傾向にあり、とくに高卒と高卒以上との層では13ポイントの差があった。低所得者層の主なEC利用は、いわゆるオンライン・ショッピングではなく、プリペイド携帯電話の通話時間(エアタイム)の購入だ。エアタイムの購入は、プリペイド・プランが普及する南アフリカでは一般的な取引で、高所得者層の間でも、エアタイムはEC取引の主要商品だ。同時に、高所得者層においては、本や衣類、食料品など、ほかの商品購入の取引におけるEC利用も広がりつつある。
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