鮮明になる対中包囲網 G7外相会合を振り返る

Stefan Rousseau / Pool via AP

 英国で開催された先進7ヶ国の外相会合は5日、新型コロナパンデミックとともに中国とロシアを現在直面する最大の脅威と位置づけ、バイデン政権が求める多国間による対中圧力を改めて強調する形となった。

 今回の外相会合のポイントは、G7諸国だけでなく、インドやオーストラリア、韓国が招待されたことだ。英国は昨年12月、今年のG7先進国首脳会合(サミット)に韓国・オーストラリア・インドを招待し、計10ヶ国で会談を行う計画を明らかにした。最近は米国だけでなく英国を中心とする欧州諸国も中国への懸念を強めている。

◆インド太平洋に接近する欧州
 新型コロナやバイデン政権の誕生などの出来事も影響しているが、欧州諸国はインド太平洋への接近を加速させている。インド洋や南太平洋に海外領土を持つ英国やフランスはインド太平洋にフリゲート艦を展開しているが、とくに英国は中国に対する厳しい姿勢を鮮明にしている。たとえば、英国のラーブ外相は香港やウイグルなど中国をめぐる人権問題を強く非難し、最近はウイグル問題をめぐって米国やカナダとともに制裁措置を発動した。英国のトラス国際貿易相は今年1月、日本やオーストラリア、シンガポールなど11ヶ国が加盟する環太平洋連携協定(TPP)に近く正式に加盟する方針を明らかにした。域外国がTPPへの加盟手続きを行うのは英国が初めてだが、EUから離脱した英国は新たな経済パートナーや枠組みを模索している。また、ドイツやオランダもフリゲート艦をインド太平洋に派遣し、米国や日本などと合同軍事演習を行うことを明らかにしており、中国を挟む形でインド太平洋と欧州の接近が進んでいる。

 ちなみに、欧州がインド太平洋に接近する背景には、政治的理由だけでなく秘めた経済的可能性もあることだろう。インド太平洋は世界全体のGDPの60%、世界人口の65%を占め、今後世界経済のハブになると言われる。欧州市場にとってもインド太平洋は欠かせない地域だ。

Text by 和田大樹