増える中国権益への攻撃 パキスタンで「一帯一路」への反発続く

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 2021年に入った。今年は9.11同時多発テロからちょうど20年となる。また米国では今月20日に新たな政権が発足し、6月18日には今後の中東情勢を左右するイラン大統領選挙が行われる予定だ。そして、世界情勢にとって最も大きなイシューである中国をめぐる情勢では、中国共産党結成からちょうど100年となる。中華民族の偉大な復興を掲げ、「大国」中国のイメージを内外にさらに示したい習政権としては、今年は共産党の権威や威厳をさらに高めるためにも重要な年となる。それだけに対外関係では外国からの圧力に屈しない姿勢を示すことになるだろう。だが、それと同時に中国への反発や抵抗の声が依然として聞こえてくる。

◆2020年に入って増加する攻撃
 その一つがパキスタンだ。同国最大の都市カラチ近郊では12月下旬、中国人とその通訳の2人が滞在する車の展示場を狙った武装集団による襲撃があり、その1週間前の中旬にもカラチで中国人が経営するレストランを狙った襲撃事件が発生した。両方の事件では、「Sindhudesh Liberation Army(SLA)」を名乗る地元の武装組織が犯行声明を出し、「中国とパキスタン政府は『中国パキスタン経済回廊(CPEC)』プロジェクトに基づき我々の土地を支配している。我々は両権益を狙った攻撃を続ける」と警告した。

 SLAの実態については不明な点も少なくないが、簡単に説明すれば、「パキスタン政府や中国が地元の豊富な資源を多額の金銭を武器に取っていくが、それは地元(民)に恩恵をまったくもたらさない。こういった搾取を続ける限り我々は武装闘争を続ける」という考え方がSLAにはある。世界のテロなどの情報をリアルタイムに収集する「Armed Conflict Location & Event Data Project(ACLED)」のデータによると、こういった攻撃は2020年に入って増加しているという。

Text by 和田大樹